この記事では、ゴールドシルバーレシオ(金銀比価)について解説します。
GSRは、金・銀の売買のタイミングや方向性を把握したり、市場センチメントを測定する指標として注目されています。
ゴールドシルバーレシオとは?
ゴールドシルバーレシオ(GSR)とは、金と銀のスポット価格の比率で、金・銀の相対的な強さを数値化した指標になります。
次のように、現在の金価格を現在の銀価格で割って算出します。
計算例:XAUUSD=527ドル、XAGUSD=13.4ドルで金・銀が現在取引されている場合、
GSR = 527 ÷ 13.4 = 39.3
GSRは1オンスの金を買うのに必要な銀の量でもあります。
たとえば、GSR= 39.3の場合、現在のスポット価格で39.3オンスの銀を売ることで1オンスの金を購入できることを意味します。
また、金・銀のスポット価格は常に変化するため、ゴールドシルバーレシオも一定ではなく金・銀の価格変化に応じて上下動します。
※ゴールドシルバーレシオのチャートは、下記のサイトで見れます
ゴールドシルバーレシオの見方&使い方
ゴールドシルバーレシオ(GSR)は、金や銀を底値や割安な価格で買い、割高な価格で売るタイミングを知らせてくれる指標です。
GSRの基本的見方
- GSRが上昇:金の相対的価値が上昇
- GSRが減少:銀の相対的価値が減少
GSRが上昇すると、金は銀に比べて高価になり、銀の購入コストが金に比べて安いことを意味しています。
GSRが上昇するパターンは、次の3つがあります。
・金価格上昇 and 銀価格減少
・金・銀価格がともに上昇するも、金の上昇率が銀よりも大きい
・金・銀価格がともに減少するも、銀の減少率が金よりも大きい
同様に、GSRが減少するパターンは、次の3つがあります。
・金価格減少 and 銀価格上昇
・金・銀価格がともに上昇するも、銀の上昇率が金よりも大きい
・金・銀価格がともに減少するも、金の減少率が銀よりも大きい
ゴールドシルバーレシオの取引シグナル
ゴールドシルバーレシオを利用して、金・銀取引のエントリーの方向・タイミングを計ることができます。
過去20年間のチャートを見ると、GSRの大部分は50~70のレンジ内で推移します。
この範囲を上下に大きく超えると、金・銀相場が方向転換する傾向があります。
※金・銀は投機・需給バランス・米ドルの価値・経済情勢など、様々な要因で価格が動くため、GSRで相場の転換を100%の精度で捉えることはできません
シグナル1:GSRが上昇して80%に到達時
- 金が上昇している場合、割高なため「売り」で仕掛ける
- 銀が下落している場合、割安なため「買い」で仕掛ける
- 金の買いポジションや、銀の売りポジションは手仕舞い時
シグナル2:GSRが減少して40%に到達
- 金が減少している場合、割安なため「買い」で仕掛ける
- 銀が上昇している場合、割高なため「売り」で仕掛ける
- 金の売りポジションや、銀の買いポジションは手仕舞い時
また、次のシグナルは、金・銀の保有ポジションの決済タイミングに利用できます。
シグナル3
- 下降トレンドを形成しているGSRが押し高値を割る:金売り or 銀買いポジションの利食い
- 上昇トレンドを形成しているGSRが押し安値を割る:金買い or 銀売りポジションの利食い
※2018年8月以降、GSRは80%以上で長期間推移しており、シグナル1が無効になっています。
そのため、GSRの過熱感を発見するシグナルとして、RSI(14期間)を代用するのがおすすめ!
シグナル4
- RSI(14)が70%越え:金は売り、銀は買いが優勢
- RSI(14)が30%下抜け:金は買い、銀は売りが優勢
ゴールドシルバーレシオで市場センチメントを測定!
GSRで現在の市場がリスクオン・リスクオフのいずれであるかを測定することができます。
金・銀の特徴は、次のとおりです。
・金:安全資産として人気であり、リスクオフ時に需要が高まり、金価格が上昇する
・銀:主に工業用途で使われるため、世界経済の好調時に銀価格が上昇しやすい
そのため、金融危機や地政学的リスクにより、市場がリスクオフの流れになると、ゴールドシルバーレシオは大きく上昇します。
逆に、世界経済の先行きが良好で、市場が安定している場合は、ゴールドシルバーレシオは低い数値になります。
GSRを使った、市場センチメントの測定
- リスクオン:GSRが減少して、低い数値で推移
- リスクオフ:GSRが急騰して、80%を超える
上のチャートは、2008年9月前後のゴールドシルバーレシオの週足です。
リーマンショックの世界的金融危機でリスクオフが強まり、GSRは大きく上昇して80%の大台に到達しました。
このように、GSRの急騰は金融市場のリスクが高まっていることを示唆し、株式市場の暴落や為替市場の大荒れの前兆になります。
補足
銀市場は金市場にくらべて市場規模が小さく流動性が低いため、ボラティリティが高い傾向にあります。
※過去1年間における1日の価格変動幅は、XAUUSD=0.4%に対して、XAGUSD=1.1%
そのため、リスクオフ時は銀価格が急落して、GSRの大きな上昇を引き起こすことがあります。
下のチャートで具体的に見てみましょう。
2020年3月15日、トランプ大統領が記者会見で新型コロナウイルスの拡大により、米国景気はリセッションに入る可能性があると発言。翌16日 米株式市場は急反落し、1987年以来の大幅な下げになりました。
これを受け、銀価格も大きく下落し、その結果GSRは急騰して120を超えました。