この記事では、建玉について解説します。
建玉を利用することで、オプション・先物・FX・株式市場での、市場の強さや方向性を分析することができます。
出来高分析と相性がいいので、出来高と組み合わせて利用するのがおすすめです!
【FX】建玉とは?
建玉とは
建玉(たてぎょく)とは、信用取引や先物取引、オプション取引、FXなどにおいて、取引約定後に反対売買されないまま残っている未決済分を指します。
信用取引を利用して建てた買い建玉や売り建玉は、6ヶ月以内(制度信用の場合)に反対売買をして決済するルールとなっています。信用買い残の増加は、期限内に反対売買の売り決済をしなければならないため、需給の悪化や将来の売り圧力として働くことになります。
ポイント
・建玉は1週間の取引日ごとに集計されます
・市場センチメントや価格の動きの強さを測定する指標
・FXや株式相場の、トレンドの継続・転換の予測シグナルとして利用されます
建玉の計算方法
建玉のカウント方法は、取引の組み合わせによって次の3つに分けられます。
1.取引の当事者がともに新規注文である
新規買い + 新規売り → +1とカウント
2.取引の一方が新規注文で、もう一方が決済注文である
新規買い + 決済売り → 0
決済買い + 新規売り → 0
※決済注文 = ポジションの手仕舞い (利食い or 損切)
3.取引の当事者がともに決済注文である
決済買い + 決済売り → -1とカウント
このように、建玉は取引されたオプション・先物の契約数とは異なります。
建玉は、市場に流入している資金量と考えることができます。
建玉の解釈
・建玉の増加:オプション(先物)市場へ、より多くの資金が集まっている
・建玉の減少:オプション(先物)市場から、資金が流出している
出来高との違い
出来高は取引された「全て」のポジションの合計に対して、建玉は「未決済」のポジションの合計です。
また、出来高は1日ごとに集計し直すのに対して、建玉は前日取引日の数値を引き継いで集計します。
次の簡単な例で、出来高と建玉の計算方法の違いを見てみましょう。
1日目
コールオプションの10枚買い(取引相手はコール売り)のとき、
出来高 = +10
建玉 = +10
さらに、コールオプションの5枚買い(取引相手は決済売り)のとき、
出来高 = 0 + 5 = 15
建玉 = 10 + 0 = 10
2日目
1日目の取引が終了し、翌朝の各数値はつぎのとおりです。
出来高 = 0 →0から集計し直す
建玉 = 10 →前日の建玉10を引き継ぐ
保有していたコールの買いオプションの10枚を決済(取引相手は決済買い)のとき、
出来高 = 0 + 10 = 10
建玉 = 10 - 10 = 0
建玉データを見る方法【FX・オプション・先物】
FX先物やオプション、先物市場の各建玉のデータは、次のサイトで閲覧できます。
NY金やNY原油などの商品先物における、CFTC(米商品先物取引委員会)が発表する建玉明細を見ることができます。
先物価格と建玉のグラフも見ることができるのでおすすめです。
東京金や東京銀など、国内商品先物の週次建玉データが公開されています。
このサイトでは、ドル円・ユーロドル・ポンドドル・オージドルの4つの建玉を見ることができます。
また、「COT Forex|OANDA」でも見れます。お好みのほうをどうぞ!
CME日経225先物のほかにも、CMEダウ平均ミニやS&P500の建玉も見れます。
CME(シカゴマーカンタイル取引所)で取引されている通貨先物の建玉を見ることができます。
IMM通貨先物ポジションは、ヘッジファンドなど大口投機玉の流れを反映しており、注目度の高い指標です。
TradingViewで、CFTCの建玉を表示することもできます。
表示方法
インジケーターの検索欄で、「CFTC」と入力しクリックする
建玉の実践的な使い方5選
建玉の実践的な使い方は次の5つがあります。
1.トレンド相場での建玉分析
建玉は、先物やオプション市場のトレンド継続・転換を確認するために利用できます。
また、その原資産であるFXや株式市場のトレンド継続・転換の判断材料としても使えます。
トレンド相場における建玉の増加は、新規注文が市場に流れ込んでおり、現在のトレンドが強いことを示唆しています。
上のチャートは、ドル円先物とその建玉、およびドル円(FX)の3つです。
建玉が増加している間は、ドル円先物とドル円(FX)が安定して継続しています。
また、建玉の減少はトレンドを支えていた買いポジションが手仕舞われ始め、トレンドの勢いが低下していることを示唆しています。
これはトレンド転換の早期シグナルになるので、トレンドの反転に気を付けてください。
このように、建玉と出来高、価格の動きを組み合わせることで、市場の強さや動向を分析することができます。
価格の方向 | 建玉&出来高 | トレンドの状態 |
---|---|---|
上昇 | 上昇 | 強い上昇トレンド |
上昇 | 減少 | 上昇トレンドの勢い低下 |
下降 | 上昇 | 強い下降トレンド |
下降 | 減少 | 下降トレンドの勢い低下 |
2.レンジ相場での建玉分析
また、建玉が横ばいor下落しているポイントでは、方向感のないレンジ相場を形成していることもあります。
そして、建玉が急上昇するとブレイクアウトが発生します。
上のドル円日足では、上昇トレンドの期間で3つのレンジ(トライアングルやボックス)を形成しています。
シグナル
- 建玉が下降トレンドラインを上抜く:ブレイク買いシグナル
- ブレイクアウトによる上昇中で、建玉が上昇トレンドラインを下抜け:利食いシグナル
また、レンジ形成中に建玉が増加した場合、レンジ内で多くの注文が蓄積されており、その損切注文によりブレイクアウトで大きく相場が動く可能性が高いです。
3.流動性の測定
建玉で市場の流動性の高さを見ることもできます。
もし、建玉が十分に大きい場合は、その市場の流動性は高く、狭いスプレッドで瞬時に注文が執行されます。
逆に、建玉が他市場に比べて極端に低い場合は、その市場の流動性は低いと判断されます。
スプレッドが広く、注文が約定しにくい可能性があるので、取引する際は注意してください。
※国内商品先物では、建玉が3000以下の銘柄は流動性が低いので要注意!
4.オプション市場の建玉で、原資産市場のセンチメントを測定
オプション市場の建玉を分析することで、原資産(FX・株)市場のセンチメントが強気or弱気かを測定することができます。
簡単な例で解説します。原資産の現在の価格が100円とします。
例1:権利行使価格110円のコールオプションの建玉=1000、権利行使価格90円のプットオプションの建玉=25のとき、
多くの市場参加者が110円まで上昇すると考えているため、市場センチメントは強気です。
例2:権利行使価格110円のコールオプションの建玉=150、権利行使価格90円のプットオプションの建玉=800のとき、
多くの市場参加者が80円まで減少すると考えているため、市場センチメントは弱気です。
例3:6か月後満期を迎えるオプション取引で、権利行使価格120円のコールオプションの建玉=50、権利行使価格110円のプットオプションの建玉=900のとき、
多くの市場参加者は6か月間で120円まで価格が上昇するとは期待しておらず、110円まで上昇すると予想しています。
他にもオプション市場の建玉では、次のような特徴があります。
・コールオプションとプットオプションで、また権利行使価格ごとに建玉の数値は異なる
・コールオプションとプットオプションの建玉がほぼ等しい場合、市場センチメントの強気・弱気が拮抗している
・満期日が近づくと、建玉は減少する傾向がある
・ATMオプションの建玉は、ITMやOTMオプションより大きくなる
・ロールオーバーで、建玉が急増することもあり
5.プットコールレシオ
プットコールレシオは、プットオプションの建玉数をコールオプションの建玉数で割った指標です。
PCRを見ることで、現在の市場でプット・コールどちらの建玉数が多いか、つまり市場参加者が「将来市場は上昇するか、または下落するか」の市場センチメントを分析することができます。
詳しくは→ 【市場心理を測定】プットコールレシオとは?【見方&使い方】