この記事では、プットコールレシオについて、次の6つの項目を解説します。
プットコールレシオは、トレンドの終了タイミングを捉える指標の1つとして利用されています。興味がある方は、ぜひご参考にしてください!
プットコールレシオとは?
プットコールレシオ(PCR)は、コールオプションの出来高(取引量)に対するプットオプションの出来高の比率を表します。
計算式
PCR = Putオプションの出来高 ÷ Callオプションの出来高
※特定の同じ権利行使価格・満期日におけるコール/プットオプションの出来高で計算します
計算例
満期日=6月第2金曜日、権利行使価格=1000円における、それぞれの1日の出来高が次の場合、
・コールオプション:8620
・プットオプション:3500
このとき、プットコールレシオは
PCR = 3500 ÷ 8620 = 0.4060
※また、建玉を利用して計算することもできます。
計算式
PCR = Putオプションの建玉 ÷ Callオプションの建玉
※特定の同じ権利行使価格・満期日におけるコール/プットオプションの建玉数で計算します
プットコールレシオのチャート
日経平均株価におけるPCRは、下記のサイトで見ることができます。
※2006年からのヒストリカルデータもあります
PCRの対象
プットコールレシオは、個別株・株価指数・FXなど、あらゆる市場で利用することができます。
特に、S&P500のPCRはVIXとともに市場センチメントを測定する指標として注目されます。
PCRで市場センチメントを測定
プットコールレシオは、市場心理を数値化する指標の1つになります。
市場心理 = 市場参加者が今後の市場に対して、楽観的か悲観的かどうか
個別銘柄のPCRを見れば、個別株ごとの市場センチメントを分析することができます。
セクターごとの市場センチメントを分析したい場合は、そのセクターを代表する3~5つの銘柄のPCRを比較したり平均値をとります。
例:化学セクター
信越化学工業 花王 資生堂 富士フィルム 旭化成
また、世界市場のセンチメントを測定する指標として、S&P500のプットコールレシオが注目されています。
下のチャートは、2015年6月~2016年4月のS&P500とPCRです。
市場の先行きが不透明になりリスクオフの流れになると、プットコールレシオは急増します。
PCR急騰の例
・2015年8月:世界同時株安(米国利上げ&中国の景気悪化懸念)
・2016年1月:ギリシャ国債のデフォルト問題再燃(反緊縮財政派の新政権発足)
プットコールレシオの見方
プットコールレシオは、1.0が基準になります。
PCRの見方
- PCR>1.0:putオプションの出来高がcallオプションの出来高を上回る
- PCR=1.0:put/callオプションの出来高が等しい
- PCR<1.0:callオプションの出来高がputオプションの出来高を上回る
PCR>1.0
プットオプションは、市場の下落に対するリスクヘッジとして活用されます。
そのため、PCRが1を超え上昇するほど、プットオプションの需要が高まっており、市場参加者の多くが「市場はそろそろ反転下落する可能性が高い」と考えていることを示しています。
上のチャートは、2019年7月~2020年3月のS&P500です。
2019年10月に発生した上昇トレンドの期間、PCRは1.0以下で推移していましたが、2020年2月後半、新型コロナ懸念によりPCRは急上昇し、S&P500は急落しました。
このように、プットコールレシオの急騰は市場のリスクが高まっていることを警告しており、相場の急落に注意してください!
PCR=1.0
プットコールレシオが基準1.0を中心に振動している場合は、オプションの買い需要・売り需要が拮抗し、市場は方向感のないレンジ相場を形成することが多いです。
このとき、PCRが一方向に大きく動くと、市場の均衡が崩れてトレンドが発生します。
PCR<1.0
プットコールレシオが1を下回る場合は、コールオプションの需要が高く、市場が上昇することを期待・予測している市場参加者が多いことを示唆しています。
注意点
プットコールレシオの分析では、コール/プットオプションそれぞれの出来高を見ることも大切です。
たとえば、プットコールレシオが上昇したとき、その理由は主に次の3つがあります。
PCR上昇の理由
- putの出来高上昇
- callの出来高減少 → 相対的に、putの出来高が大きくなる
- putの出来高上昇&callの出来高減少
①や③の場合は、プットオプションの需要が高まっており、PCRの増加は上昇トレンドの終わりが近いことを示しています。
ただし、②の場合は、プットオプションの需要が増えているわけではないので、PCRの増加はトレンドの転換につながらず、上昇トレンドが継続する可能性が高いです。
PCRでトレンド転換を予測!
プットコールレシオが急騰・急落して下記の水準を超えると、トレンド転換やレンジ相場への移行の可能性があります。
PCRの重要水準
- 0.7到達:コール需要が急増し、強気ムードが強まる
- 1.3到達:プット需要が急増し、弱気ムードが強まる
上の上昇トレンドでは、PCRが1.3に到達すると、横ばいのもみ合い相場に移行しています。
必ずしもこうなるわけではありませんが、トレンドフォロワーは警戒しておくべきシグナルになります。
※ボリンジャーバンドの±2σバンドでPCRの行き過ぎを発見することもできます。
また、プットコールレシオは順張りシグナルとしても活用できます。
順張りシグナル
- 上昇トレンド:PCRが0.7に到達で、順張り買い
- 下降トレンド:PCRが1.3に到達で、順張り売り
補足:PCR1.0越えについて
上昇トレンドの初期・終期で、PCRが1.0を超えるのは意味合いが異なります。
トレンド初期でのPCR1.0越え
発生した上昇トレンドに懐疑的な大衆が売りで仕掛けている
→ この売りポジの損切りを原動力に市場は上昇!
トレンド終期でのPCR1.0越え
上値が重くなりトレンドが終了する可能性が高いため、順張りで仕掛けるのは危険!
トレンド中期では、PCRは1.0を超えず、1.0以下で推移していることが理想的です。買い需要に支えられ、安定した上昇トレンドを形成します。
※下降トレンドにおいて、PCRが1.0を下回るケースでも同じです
PCRの移動平均化
プットコールレシオは振動が激しいため、移動平均線で平滑化して需給バランスのトレンドを把握することができます。
下のチャートでは、PCRに20SMAを追加しました。
上昇トレンドにおいて、20SMAが1.0以下で推移しており、中期的にコールオプションの需要が高いことがわかります。
20SMAが1.0以下で
- 下落や横ばいしているとき:コールの需要が安定しており、トレンドが継続しやすい
- 上昇して1.0に向かうとき:プットの需要が増え、トレンド転換 or 調整下落へ移行の可能性大
VIXとPCRのコラボ
VIX(恐怖指数)はPCRと同じように、S&P500のデータをもとに算出された市場センチメント指標で、S&P500のインプライドボラティリティを数値化します。
このVIXとプットコールレシオを組み合わせることで、市場センチメントをより精確に分析することができます。
VIXとPCRがともに急騰する場合は、S&P500のIVとプットオプション需要が同時に高まっているため、相場が急落するリスクが高いです。
VIXが急騰しても、PCRが急騰していない場合は、株価は反転下落する可能性は低いです。