この記事では、VIX(恐怖指数)について、次の7つの項目を解説します。
目次
VIX(恐怖指数)とは?
VIX(恐怖指数)とは、 S&P500指数の価格データをもとにした、ボラティリティ指数です。
これはインプライドボラティリティを使って算出され、今後30日間のS&P500指数のボラティリティに対する市場の期待・予想値を表します。
ポイント
- VIXはアメリカ株式市場のバロメーターであり、VIXが高いとその構成銘柄の多くのIVも高い
ちなみに、アメリカのボラティリティ指数は、VIXをあわせて次の3つがあります。
VIX数値について
VIXの数値は、1年間の予想ボラティリティをパーセンテージ(%)で表したものです。
例:VIX=40%
今後1年間でのS&P500の価格変動率が40%、つまり現在の価格を基準に上下に40%の範囲に価格が収まる確率が66.7%(=1標準偏差)であることを意味します
また、1か月・1週間・1日のVIX値は、次の式で算出できます。
計算式
- 月次VIX = VIX ÷ √(12)
- 週次VIX = VIX ÷ √(52)
- 日次VIX = VIX ÷ √(252) ※1年間の取引日を252日と仮定
計算例:VIX=20%のとき
週次VIX = 20 ÷ √(52) = 2.7
つまり、S&P500の今後1週間の価格変動率が2.7%であると予測できます。
VIX(恐怖指数)の仕組み
投資家は株価に大きな変動が予想されるとき、保有株をオプションでヘッジすることでリスクを軽減しようとします。
たとえば、株式市場のリスクが高まり「株価が暴落するのでは?」と投資家の不安が高まると、プットオプションの需要が高まり、プットオプション価格が上昇します。
このとき、VIXの計算式には、S&P500指数のオプション価格が組み込まれているため、プットオプション価格が上昇するとVIXも上昇します。
このように、市場の不確実性や投資家の不安が高まるほどVIXが上昇し、市場のボラティリティが今後増加する可能性が高いことを警告してくれます。
VIXの見方(5つの特徴)
VIX(恐怖指数)はその名の通り、市場参加者(ヘッジファンド・個人投資家など)の市場の先行きに対する不安・恐怖心の大きさを数値化します。
VIXの見方
- VIX<20:市場は安定しており、リスクオンムードになっています
- VIX>30:市場の不確実性が高まり、市場参加者の不安が高まっています。リスクオフの流れに変わっています
- VIX>40:市場のリスクは極限に高まっており、非常に危険な相場環境です
最近では、コロナウイルスの世界的流行に対する懸念が高まり、VIXは2018年2月以来の40%越えを記録しました。
VIXが40%越えした最近の日付は、次の通りです。
・2008年9月:リーマンショック(過去最高を更新)
・2010年5月6日:HFTの超大口注文による、NYダウ平均株価の暴落
→ 年始の脅威となったフラッシュクラッシュとは?
・2011年8月5日:米国債ショック(米長期国債をAA+に格下げ)
→ S&Pが米国債を「AAプラス」に格下げ|ロイター
・ 2015年8月21日:中国株安の再燃による中国経済の懸念で、世界経済後退への警戒感の高まり
→ 特集:中国ショック 株・原油暴落
・2018年2月6日:米長期金利の急上昇を発端とした世界的株安(前日にNYダウが過去最大の下げ)
→ なぜ2018年は2度「世界同時株安」が起きたのか
VIXの5つの特徴
VIXの他の特徴として、次の5つがあります。
1. VIXは、直近の重要な高値・安値やキリ番(20・30・40%など)がレジサポラインとして機能する
2. 50EMAや200EMAも、VIXのレジサポラインとして注目される
また、200EMAはVIXの長期的なトレンド方向を把握するのに役立ちます。
3.トレンドラインやチャネルライン上でもVIXは反発する
4.VIXはS&P500の満期日に影響を受ける
インプライドボラティリティは満期日が近づくと低くなる傾向があるため、VIXも減少する傾向があります。
5.VIXはS&P500と逆相関
VIXはS&P500と逆相関関係にあります。
・S&P500上昇 → VIX下落
・S&P500下落 → VIX上昇
ちなみに、VIXはS&P500よりも変動幅がはるかに大きいです。
たとえばリーマンショック時、S&P500は2008年8月1日~2008年9月30日の間に約15%減少したのに対し、VIXは約250%上昇しました。
金利とVIXの関係
一般的に、リスクオンでは高金利の通貨が人気で、為替トレーダーは金利差から利益を上げるために高金利の通貨を買う傾向があります。
逆に、リスクオフでは安定性の高い低金利通貨が買われやすいです。
金利とVIXの関係
- VIXが30%越え→リスクオフ→低金利通貨の需要がUP!
- VIXが30%を下回る→リスクオフ→高金利通貨の需要UP!
VIXが30%を超えると、高金利通貨のオージードル・ニュージーランドドル・南アフリカランドなどが売られやすいため、キャリートレードの運用は危険です。
また、VIXは金・銀相場と相関関係にあります。
VIXが30%越えると、安全資産である金や銀に資金が流れて、金や銀相場が上がる傾向があります。
関連 【建玉が攻略のカギ!】金先物相場とは?【メリット&デメリット】
VIXを取引する方法【オプションを使ったヘッジ戦略】
VIXは直接取引することはできませんが、CFD・先物・オプション・ETFでVIXを取引することができます。
- CFD:米国VI(VIX先物のCFD)
- 先物:VIX先物
- オプション:VIXオプション
- ETF:VXX、VIX短期先物指数
たとえば、 VIXオプションでは、原資産価格やSQ日までの残り日数、金利などに影響されずに、ボラティリティを取引することができます。
取引例1
ボラティリティが増加したりS&P500が減少したとき、VIXオプションのコール買いで利益を上げることができます
取引例2
VIXが高い場合、VIXオプションのプット買いで、ボラティリティの減少から利益を上げることができます。
また、 VIXオプションのコール買いで、株式市場の急落に対してポートフォリオをヘッジすることができます
オプションを使ったヘッジ戦略
VIXオプションを使ったヘッジ戦略
ATMに近いOTMのコールオプションを買う
このヘッジ戦略の仕組みは、次のとおりです。
株式市場(S&P500)が急落したとき、VIXは勢いよく上昇します。
このとき、VIXコールオプションの価格は上昇するため、VIXコールの利益が株式ポートフォリオの損失を相殺します。
※VIXが大幅上昇したとき、VIXコールの利益がポートフォリオの損失を上回り、株式市場の下落で利益を上げることもあります
このヘッジ戦略のポイントは、次の3つです。
ポイント
- VIXが低い数値(15%以下)で推移している
- 1か月間ポートフォリオを保護したい場合は、満期日まで残り3か月のVIXオプションを取引する
- ポートフォリオとS&P500の相関性が70%以上(β≧0.7)であること
相関性が低いと、ポートフォリオの価値が減少しても、S&P500は下落せずVIXが上昇しないため、ポートフォリオをヘッジすることはできないので注意してください。
VIXの実践的な3つの使い方
VIXの使い方は、次の3つがあります。
1.リスク管理
VIXの数値で市場のリスクの度合いを測り、ポジションのロット数を調整します。
VIX<30
市場は安定しているため、1回の取引におけるリスク率は1~2%にします
VIX≧30
市場が不安定化しているため、1回の取引のリスク率は通常の半分以下(≦0.5%)に抑えます。
また、取引頻度を減らしたり、オーバーナイト取引を禁止するのも有効です
2.株式相場の天井・底の予測
VIXの急騰(=スパイク)の発生は、S&P500や米国株式相場におけるトレンドの転換につながるケースが見られます。
つまり、VIXのスパイクは相場の天井・底を予測する材料として活用できます。
特に、長期上昇トレンドにおいて、VIXでスパイクが発生すると、リスクオンの流れが生まれてそのトレンドが終了する可能性が高いです。
また、VIXとS&P500の動きの関係性は、米国株式市場の動向のヒントを与えてくれます。
S&P 500 | VIX | 株式市場 |
---|---|---|
上昇 | 下降 | 安定した上昇が継続する可能性大 |
上昇 | 上昇 | VIX上昇により、上値が重くなりつつあり、上昇トレンドの転換が近い? |
下落 | 上昇 | 安定した下落が継続する可能性大 |
下落 | 下落 | 下降トレンドの転換が近い? |
3.逆張りトレード
VIXの急騰は、逆張り派トレーダーにとって逆張り売りを仕掛けるシグナルになります。
戦略例
200EMAはVIXの平均回帰線
→ VIXが急騰して200EMAから大きく乖離したら、VIXオプションのプット売りのチャンス!
VIXとプットコールレシオ
VIXの他に、プットコールレシオも市場センチメントを測定する指標として注目されています。
この2つを組み合わせることで、相場の将来のボラティリティや市場センチメントをより詳しく分析することができます。