この記事では、金先物相場について、次の6つの項目を解説します。
金先物相場とは?
金先物は商品先物取引の1つで、将来の一定時期に金を受け渡す契約をして、その価格を現時点で決める取引のことです。
金先物取引
- 買い手:決済日に、合意した固定価格で金を売り手から購入する
- 売り手:固定価格で決済日に金現物を受け渡す
ただし、金現物と代金を必ず交換しないといけないわけではなく、期日前に反対の売買契約を行い、差金決済を行うこともできます。
差金決済の損益 = 金の購入価格 ー 金の支払価格
※金先物市場では、この短期の投機取引がメインです
金先物の取引所一覧
金先物市場は、以下の取引所で取引されています。
取引所一覧
- COMEX(ニューヨーク商品取引所):世界最大の金先物取引所
- CBOT(シカゴ商品取引所)
- TOCOM(東京商品取引所)
- NCDEX(インド国立商品デリバティブ取引所)
- DGCX(ドバイ金・商品取引所)
- MCX(インド・マルチ商品取引所)
- KOFEX(韓国先物取引所)
下のチャートは、東京金先物の日足です。
金先物の価格は、金の需要や世界経済の動向、地政学的イベントなどにより絶えず変動します。
金先物取引のメリット&デメリット
メリットは、次の4つです。
1.金先物取引のレバレッジは、最大約70倍
金先物では、自己資金の約70倍の取引を行えます。
FX(25倍)や株の信用取引(3.3倍)、日経225先物(33倍)に比べて、少ない資金でより大きな取引を運用できます。
2.「買い」だけでなく、「売り」で取引を開始することも可能
金現物(金地金・金貨)では、金を買って価格の上昇でのみ利益を上げることができますが、
金先物では売りで仕掛けて(=空売り)、金価格の下落から利益を上げることもできます。
3.金先物取引ではETFと違い、ポジション保有時に運用管理費用はかかりません
ただし、取引手数料はかかります。手数料体系は証券会社によって特色があるので、自分の取引スタイルにあったものをお選びください。
※たとえば、デイトレードの片道分の手数料が無料であったり、損切時の手数料を無料にしている証券会社があります
4.金ミニ先物で、少額投資も可能
金ミニ先物は売買単位が金100gで、通常の金先物取引で比べ10分の1の資金で取引することができます。
価格変動による損失も小さく抑えることができるため、先物取引初心者におすすめです!
5.金先物取引における損失は、3年間の繰越控除が認められています
デメリットは、次の2つです。
1.ハイリスク・ハイリターン
金先物取引では、レバレッジにより少額資金で大きな取引を行うことができるのが魅力ですが、
その分価格変動による損失が大きくなるリスクもあります。
また、レバレッジが大きいほど、小さな価格変動により最低証拠金維持率を下回り、マージンコールが発動する確率が高まります。
→ 初心者の方はレバレッジ10倍以下での取引や金ミニ先物を選択するなど、リスクを抑えて慎重に取引を行いましょう
2.金先物取引の規制
金融危機や深刻な地政学リスクにより、先物取引が停止するリスクもあります。
たとえば、2001年9月12日アメリカ同時多発テロの翌日、アメリカの金融取引がすべて停止され、先物のポジションが決済できない事態になりました。
この間、金先物価格は急騰し、売りポジションを抱えていた市場参加者は大きな損失を被りました。
ニューヨーク金先物【チャート&種類】
ニューヨーク金先物は、COMEX(ニューヨーク商品取引所)で取引される金先物のことで、1日平均2700万オンスの金が取引されています。
NY金先物は次の3種類があり、取引単位が異なります。
種類 | シンボル | 取引単位 | ティック |
---|---|---|---|
Gold | GC | 100トロイオンス | 0.1米ドル |
E-Mini Gold | QO | 50トロイオンス | 0.25米ドル |
E-Micro Gold | MGC | 10トロイオンス | 0.1米ドル |
※1トロイオンス=31.1035g
E-MiniやE-Microの金先物では、標準取引の1/2、1/10のサイズで取引することができるので、少額資金でリスクを抑えてNY金先物を取引することができます。
ニューヨーク金先物のリアルタイムチャート
それぞれのチャートは、Tradingviewで見ることができます。
※また、東京金先物(TGD1)も、TradingViewで見ることができます
建玉で金先物市場の動向を把握しよう!
金先物価格と建玉の関係で、金先物市場のトレンドの状態を分析することができます。
※建玉=先物市場で反対売買されずに、未決済契約の総数
金先物価格と建玉の関係
- 建玉の上昇を伴う、金価格の上昇:安定した上昇トレンドの形成を示唆
- 建玉の減少 or 横ばいを伴う、金価格の上昇:先物買いの需要が低下しており、上昇トレンドは弱体化しています
金先物市場の建玉は、サイト「NY金建玉明細|第一商品」で確認できます。
ここでは、直近5週間の大口投機・商業・小口投機の各建玉を閲覧できます。
下のチャートは、NY金とその建玉の推移です。
金先物のヘッジ取引
金先物市場では投機のほかに、ヘッジ取引も行われています。
このヘッジ需要も、金先物市場の価格変動に影響を与えます。
金先物のヘッジ取引とは?
金先物取引を利用したヘッジは、金の価格変動リスクを軽減するのに有効です。
ヘッジ取引をする主な市場参加者
- 鉱業会社
- 宝飾メーカー
- 金製品製造メーカー
たとえば、鉱業会社は金先物の売りポジションを建てることで、将来の価格下落による損失を回避します。
金価格が下落したとき
金の売却での利益は減りますが、先物売りポジションを買い戻して得た利益でその損失を相殺します
また、宝飾メーカーは金価格の高騰による損失リスクを回避するために、金先物の買いポジションを建てます。
金価格が上昇したとき
金調達コストは上昇しますが、先物の買いポジションを売って得た利益がその損失を相殺します