この記事では、天然ガス相場の価格変動要因や原油相場との関係性を解説します。
これらの特徴は、天然ガス相場を投資するうえで必ず知っておくべきポイントなので、ぜひ参考にしてください!
天然ガス相場の変動要因6選!
天然ガス相場(先物やCFDなど)では、天然ガスの実需給や投機による需給によって価格が変動します。
天然ガスの需給バランスに影響をを与える要因として、次の6つがあります。
天然ガス相場の変動要因
- 天然ガス貯蔵量
- 世界的な需要
- 代替エネルギーとの競合
- 天然ガスの生産量
- 自然災害
- 季節
順に解説していきます。
1.天然ガス貯蔵量
天然ガス消費量世界1位(2018年)であるアメリカの「天然ガス貯蔵量」は、天然ガス相場に大きな影響を与えます。
アメリカの天然ガス貯蔵の変化量は、毎週米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が発表しています。
上のグラフは、1週間ごとの天然ガス貯蔵量の増減の推移を表します。
見方
・プラスの数値:在庫の増加 → 天然ガスの消費量&需要の低下 or 供給量の増加を示唆
・マイナスの数値:在庫の減少 → 天然ガスの消費量&需要の増加 or 供給量の減少を示唆
シグナル
・発表された結果が予想値を大きく上回る場合:天然ガス相場の売り材料
・発表された結果が予想値を大きく下回る場合:天然ガス相場の買い材料
特に、結果と予測値が逆行している(予想値が減少しているのに対して、結果が上昇している or 予想値が上昇しているのに対して、結果が減少している)場合、天然ガス相場に大きな影響を与える可能性が高いので要注意です。
補足
天然ガス貯蔵は、主に季節的な需要の変化に対応するために利用されます。
そのため、アメリカの天然ガス貯蔵量は、需要が低い5月~9月(特に夏)に増加し、需要が高い11月~2月に減少する傾向があります。
2.世界的な需要
過去30年間、天然ガス需要は世界的に増加しています。
アジアの新興国での需要増加率が大きく、天然ガス価格の上昇の1つの要因になっています。
また、天然ガスの需要量は、世界経済の動向に大きく影響を受けます。
・好景気:産業部門の需要増加 → 天然ガス価格の上昇
・不景気:産業部門の需要低下 → 天然ガス価格の減少
特に、アメリカやロシア、中国など、天然ガス消費量の多い国の需要の変化は、天然ガス価格に大きな影響を与えます。
3.代替エネルギーとの競合
天然ガスは、原油・石炭・太陽光・風力・水力などの他のエネルギー源と価格が競合します。
他の代替燃料の価格が天然ガスより安くなると、天然ガスの需要が低下します。
天然ガスの需要が低下する要因
- 原油の生産量・供給量の増加
- 原子力発電所や風力発電所の新設や稼働率の増加
- 天然ガス価格の急騰
たとえば、天然ガス価格が急騰すると、発電所や鉄鋼工場などはよりコストの安い石炭や原油に燃料を切り替えるため、天然ガスの需要が低下し、天然ガス価格の上値が重くなり下落に転じやすくなります。
4.天然ガスの生産量
天然ガスの生産量の増加は、天然ガス価格の減少を引き起こします。
例
- 掘削技術の進歩:シェールガス革命でアメリカの天然ガス生産量UP
- 天然ガス田の発見:米エクソンモービル、キプロス沖で大規模天然ガス田発見
シェールガス革命により、2008年ごろからアメリカの天然ガス生産量は年々増加しており、原油価格はこの12年間で長期下落しています。
また、天然ガスの採取方法である「水圧破砕法」が規制されると、天然ガスの生産量が低下し、価格の高騰を引き起こします。
米政府、シェールオイル・ガスの水圧破砕法規制案を公表|WSJ
5.自然災害
地震やハリケーンなどの自然災害が産出地域で発生し、天然ガスのパイプラインや掘削機が故障して一時的に天然ガスの供給がストップすると、天然ガス価格が急騰します。
たとえば、2018年10月、アメリカメキシコ湾で発生したハリケーンにより、メキシコ湾海域の施設(天然ガス生産29%相当)を一時閉鎖しました。
これにより、天然ガス供給量がじりじりと減少し、11月に価格が高騰しました。
米メキシコ湾岸のエネルギー施設で従業員退避、ハリケーン接近で|ロイター
6.季節
天然ガスは、商業用・家庭用暖房器具の燃料として、冬(12月~2月)に大きな需要があります。
特に、世界的に例年より寒い冬の年は、天然ガスの消費量が増え需要が増加するため、天然ガスの価格が上がりやすいです。
逆に、暖冬の年は消費量の伸びが鈍化するため、天然ガス価格は上昇が鈍い、または上昇しにくいです。
補足
天然ガス消費量は、南半球より北半球のほうがはるかに多いため、北半球が冬である12月~2月の天然ガスの需要が1年で最も大きくなります。
原油相場との関係
原油・天然ガス会社の多くは、原油と石油の両方を採掘・販売しています。
そのため、収益が最大化するよう、原油価格と天然ガス価格の大きさに応じて、2つの資源の採掘比率を調整しています。
原油価格が上昇して、天然ガス価格より高いとき
原油採掘量が増加*して、その結果天然ガスの供給量が減り、天然ガス価格の上昇につながる
→ さらに原油価格が上がると、原油の需要が低下し、天然ガスの需要&価格の増加する
*原油価格が高いほど、原油の販売利益が上がるため、原油会社は原油の採掘量を増やそうとします
下のチャートで具体的に見てみましょう。
WTI原油は2017年7月~2018年10月の間、長期上昇トレンドを形成し、34.6ドル価格が上昇しました。
この原油価格の高騰で、天然ガスの供給量低下&需要UPを引き起こし、2018年9月~11月に天然ガス価格は大きく上昇しました。
その後、原油価格の急落により、原油の需要が増加すると、天然ガス価格は急落しました。
このように、原油価格と天然ガス価格の大小関係は、天然ガスの供給量に影響を与えます。
ちなみに、この2つの価格の比率(ONR)で、原油と天然ガスの価格の相対的な大きさを見ることができます。
ポイント
・ONR=1バレルあたりの原油価格÷10MMBtuの天然ガス価格
・ONRは通常10~40の間で推移する(2015年~2020年)
・ONRの上昇:原油価格が相対的に高くなっている
・ONRの減少:天然ガス価格が相対的に高くなっている
シグナル
- ONRの急騰:原油の売り or 天然ガスの買いシグナル
- ONRの急落:原油の買い or 天然ガスの売りシグナル
ONRが10%近くまで下落すると、原油価格は超割安であり、近い将来上昇に転じる可能性が高いので、買い場を探す絶好のタイミングになります。
補足
2018年12月は原油・天然ガスともに下落していますが、原油の下落率のほうが高いため、ONRは大きく減少しました。
天然ガス相場だけ見ると、12月末時点で大きく下がっており割安感がありますが、ONRは低い水準にあるため、下落余地が残っていると判断できます。
天然ガスの取引方法
天然ガスの取引方法は、主に次の5つがあります。
天然ガス取引の種類
- CFD
- 先物
- 関連株
- ETF
先物
天然ガスCFDを取引できる証券会社は、次の3つがあります。
証券会社 | 取引銘柄 |
---|---|
IG証券 | NY天然ガス |
GMOクリック証券 | 天然ガス(CME) |
サクソバンク | US天然ガス |
先物
天然ガス先物で人気の銘柄は、ヘンリーハブ天然ガス先物です。
ヘンリーハブ天然ガス先物は、天然ガス市場のベンチマークとして注目され、デイトレードができるほどの大きな出来高・流動性をもっています。
これは、次の証券会社の海外先物で取引できます。
・楽天証券
・サクソバンク
・松井証券
ヘンリーハブ(Henry Hub)チャート|TradingView
関連株
天然ガスと相関性の高い株式銘柄は、次の5つがあります。
詳しくは→ 「天然ガス」 関連銘柄|株マップ
また、海外の株式銘柄で天然ガスと相関性が高いのは、次の5つがあります。
・BHPビリトン:オーストラリアの、金属および天然ガスを扱う鉱業会社。
・アンテロ・リソーシズ:コロラド州デンバーに拠点を置く、アメリカの独立系石油・天然ガス会社
・シェニエール・エナジー:アメリカの液化天然ガス関連事業を行っているエネルギー会社
・フィリップス66:ヒューストンに拠点を置く多国籍エネルギー企業
・キャボット・オイル・アンド・ガス・コーポレーション:アメリカで天然ガス及び石油の開発・採掘・探査を行っている会社
ETF
天然ガスのETF(上場投資信託)は、次の3つがあります。
・WisdomTree 天然ガス上場投資信託:シカゴ商品取引所(CBOT)で取引されている天然ガス先物をベースとするETF
・ファーストトラスト天然ガスETF:ナスダック上場企業の、天然ガス関連企業 約35銘柄で構成されたETF
・S&P石油・ガス探鉱生産ETF:S&P500のうち、石油・天然ガスの探鉱、開発、生産を担う会社で構成されたETF