この記事では、原油先物取引について、次の5つの項目を解説します。
原油先物とは?
原油は商品先物取引のひとつで、流動性が高くボラティリティが十分にあるため、先物トレーダーに人気の銘柄です。
原油先物とは?
原油を将来の決められた日に、取引時に決められた価格で売買を行う契約のこと
原油先物は先物取引所で取引することができ、原油取引&投資する一般的な方法です。
トレーダーは原油先物取引を利用することで、原油そのものを売買することなく、原油の価格変動から利益を上げることができます。※先物取引では、満期日までに反対売買を行うことで差金決済ができます
先物価格について
原油の現物価格は、現在の需給に応じた原油の価値を表すのに対して、
原油先物価格は将来原油がどれだけの価値があるか、市場参加者の思惑を反映しています
原油先物の種類
原油先物は、主にニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)と東京商品取引所(TOCOM)で取引されています。
原油は原産地・抽出方法・精製過程などにより、組成・品質が異なる様々な種類があり、原油先物にもいろいろな銘柄があります。
主な原油先物銘柄
- WTI
- ブレント原油
- ドバイ原油
- OPECバスケット
WTI原油先物
WTI原油は、主にテキサス州・ルイジアナ州・ノースダコタ州で産出される高品質の原油です。
これはガソリンの原料に適しており、ブレント原油と比べ価格が高い傾向があります。
また、WTI先物価格は世界経済の動向を反映する、市場センチメント指標としても注目されています。
ブレント原油先物
ブレント原油は、北海で産出される原油(ブレンド原油・フォーティーズ原油・エコフィスク原油etc.)であり、
WTI原油とともに原油価格のベンチマークとして注目されています。
ドバイ原油
ドバイ原油は、アラブ首長国連邦のドバイで産出される原油です。
日本の原油輸入量のうち80%以上が中東産を占めるため、東京商品取引所(TOCOM)では中東産原油の基準となるドバイ原油を取り扱っています。
OPECバスケット
OPECバスケットは、OPEC加盟国(サウジアラビア・アルジェリア・ドバイ・ナイジェリアetc.)の12種の原油価格の加重平均値になります。
この価格は中東の地政学的リスクの影響を受けやすく、OPEC加盟国の政治情勢により価格変動が激しくなりやすいので要注意です。
原油先物取引のメリット3選!
原油を先物で取引するメリットは、次の3つが挙げられます。
1.流動性&ボラティリティの高さ
長期投資はもちろん、デイトレード(日中取引)も取引できるほどの流動性が原油先物市場にはあります。
また、先物商品の中でボラティリティが高く、デイトレーダーに人気の銘柄です。
2.ファンダメンタルで取引できる
FX相場はテクニカル分析にもとづく売買で相場が動くケースが多く、テクニカル分析に精通していないと取引で利益を上げるのが難しいです。
それに対して、原油相場はファンダメンタル(経済の動向・地政学的リスク)で価格が大きく動くことが多く、ニュースや経済指標などファンダメンタル分析で取引するトレーダーにおすすめです。
3.投資ポートフォリオの分散化
株やFXと相関性が高くない原油先物を取引銘柄に加えることで、ポートフォリオのリスクを分散化することができます。
原油投資の種類
原油の取引方法は、先物の他に次の4つの方法があります。
・石油関連株
・原油ETF
・原油CFD
・原油オプション
石油関連株
原油への投資として、石油生産・精製や油田探査を行っている企業の株式投資もあります。
石油関連株は原油価格との相関性が高く、先物やCFDを取引していない株式トレーダーが原油を間接的に取引したい場合におすすめ!
注意点として、株価は原油価格だけでなく、会社の業績・配当利回り・ニュースなど他の要因でも動くため、株価の動きを読むには多角的なファンダメンタル分析が必要になります。
また、海外での石油関連株は次のようなものがあります。
海外の石油関連株の例
原油ETF
東京証券取引所では、次の3つの原油ETFがあり、これらは原油価格に連動するように設計されています。
・WTI原油価格連動型上場投信:円換算した「NYMEXにおけるWTI原油先物の直近限月の清算値」と連動するETF
・WisdomTree WTI 原油上場投資信託:シカゴ商品取引所(CBOT)で取引されている原油先物契約を基準とするETF
・NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信:日本円換算したNOMURA原油ロングインデックスと連動するETF
原油ETFは5000円以下の少額投資が可能で、また低コストで運用できるため、投資初心者におすすめです。
詳しくは→ 原油ETFに投資する3つのメリットと注意点|ETF Gate Way
原油CFD
原油CFDは、原油の価格変動から利益を上げることができる差金決済取引です。
先物取引とは違い、決済期日がないためポジションを長期間保有し続けることができ、また最低証拠金が先物より少ないため、より少ない資金で取引することができます。
WTI原油を取引できるCFD会社
- GMO
- DMM
- サクソバンク
- IG証券
原油オプション
先物と似た取引ですが、取引方法や損益図など違いがあります。
詳しくは、下記サイトの記事を参考にしてください。
オプション取引と先物取引の違い
先物取引・オプション取引について|大和証券
原油相場を動かす7つの要因
原油価格は、主に次の7つの要因で動きます。
- 景気
- 地政学的イベント
- OPEC
- 米国週間原油在庫統計
- ドルの強さ
- 季節性
- 災害
1.景気
原油の需要の大きさは、世界経済の動向に大きく依存します。
特に、原油の消費量の多いアメリカ・中国・ヨーロッパの経済が好調時は、原油の需要が高まり、原油価格は長期上昇トレンドを形成します。
逆に、景気後退時は、原油の需要が減少して、原油価格は下落しやすいです。
原油価格の減少を引き起こす原因は、次のようなものがあります。
原油安の原因
・天然ガスや太陽光発電など、代替エネルギーの生産量・需要の増加
・シェールオイルのような新技術により、原油の供給量の増加
2.地政学的イベント
中東の原油産出国の政治不安や紛争は、原油供給量の減少懸念を引き起こし、原油価格が高騰します。
サウジアラビア・アブカイクとクライスにある石油関連施設が14日、空爆によって炎上し、日量570万バレルの生産が停止した。これは、世界供給量の約5%に相当する。15日には原油価格が急騰し、約4カ月ぶりの高値水準となった。
引用:サウジ石油施設攻撃で原油急騰、4カ月ぶり高値|BBC NEWS
3.OPEC
OPECは、加盟国における原油の供給量を調整することで、原油価格をコントロールしようとします。
OPEC会合で原油の減産が決定すると、原油価格は大きく上昇するため、OPECの動向には要注意です。
例
2016年11月30日、OPECは8年ぶりの減産で正式合意し、その結果NY原油(WWTI原油)は急騰しました。
4.米国週間原油在庫統計
原油消費量が最も多いアメリカの「原油在庫数」は原油価格に大きな影響を与えます。
米国週間原油在庫統計は、米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が毎週水曜日に発表する指標です。
- 在庫数の増加:原油の需要低下→原油価格の下落
- 在庫数の減少:原油の需要増加→原油価格の上昇
在庫数の大きな変化は、原油市場の需給バランスを大きく崩すため要注意です。
また、アメリカの石油掘削リグ稼働数や中国の石油洋上在庫も、原油の需給に大きな影響を与えます。
- 掘削リグ稼働数の増加:将来の原油供給量が増加→原油価格の減少が予測される
- 掘削リグ稼働数の減少:将来の原油供給量が減少→原油価格の上昇が期待される
5.ドルの強さ
原油価格はドル建てで取引されています。
そのため、ドルの強さが原油価格に影響を与えます。
- ドル安→原油の売り上げ収入が減る&コスト上がる→原油生産量の削減→供給量の減少で、原油価格上昇
- ドル安→原油の売り上げ収入増加&コスト下がる→原油生産量の上昇→供給量の増加で、原油価格減少
6.季節性
原油価格は、季節的な要因に影響されます。
- 7月~8月:欧米は夏季休暇の旅行シーズンでガソリン消費量が増えるため、原油需要が高まります
- 12月:暖房機器の石油需要により、原油価格が急騰しやすい月です
春や秋のシーズンは、原油の需要が低く、原油が上昇しにくい傾向があります。
7.災害
自然災害も原油の価格変動の1つの要因です。
地震やハリケーンにより、 原油精製所や原油採掘所が被害を受け、原油供給が停止すると原油価格は上昇します。
また、2020年1月~3月、新型コロナ感染拡大により原油価格は10週連続で大きく下落しました。