月には、人間の気分や行動に影響を与える不思議な力があります。
株式相場の世界でも、月の満ち欠けの周期が投資家の気分や意思決定に影響を与え、株価を動かす要因の1つだとする説があります。
そこで今回は、日経平均株価や個別株と月の満ち欠けの周期との相関性について調べてみました。
結論をいいますと、「満月や新月で相場が転換し、また株価は毎月新月の頃に上がりやすく、満月の頃に下がりやすい」傾向があると考えられます。
相場の転換点を捉える指標の1つとして、月のサイクルを利用してみてはいかがでしょうか?
月の満ち欠けの周期が株価に与える影響
月は地球の周りを公転しており、太陽と地球との位置関係から月の満ち欠けが生じます。
下の論文では、満月や新月の前後で事件や犯罪の発生件数が多いことが指摘されており、特に満月と新月が人間の心理や行動に大きな影響を与えると考えられています。
そしてこの原因として、月の引力による潮汐作用が人間の精神バランスを狂わしているそうです。これをバイオタイド理論といいます。
バイオタイド理論
人間の体の約80%が水分で構成されており、人間の体内の水分は地球の地表と同様に月の引力を受けています。
満月では太陽と月が地球から見て反対にあるため反対の方向から引っ張られ、新月では太陽と月の引力が重なり一方向から引っ張られます。
こうした引力による潮汐作用が体内の水分バランスを崩して神経を興奮させ、緊張が生じたり癇癪を起こしやすくなるなど、人間の心理や行動に変化を与えると考えられています。
参考:アーノルド リーバー「月の魔力」 東京書籍(2010)
月の満ち欠けと株価の関係
月の満ち欠けのサイクルは平均29.5日(約1ヶ月)であり、月に1回満月と新月が出現します。
上で述べましたが、満月や新月の頃は、人間の不安や緊張がピークに達し、感情が制御できず衝動的・暴力的な行動に駆られやすい時期になります。
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そのため投資家も、認知バイアスや損失回避・自信過剰など、トレードの意思決定に悪影響を受ける可能性があります。
- 悲観的になり、ネガティブなニュースに過剰に反応する
- リスク回避の懸念で保有株の売りが入りやすい
- ナンピンや塩漬けなど、リスキーな投資に走りやすい
また、「サザエさんと株価の関係 」という本で、満月・新月と日経平均株価の騰落率&ボラテリティの関係性についての分析データが掲載されているので、こちらも参考までに紹介します。
平均騰落率 | ボラテリティ | |
---|---|---|
満月 | -0.1% | 1.61% |
満月以外 | 0.01% | 1.52% |
平均騰落率 | ボラテリティ | |
---|---|---|
新月 | -0.03% | 1.53% |
新月以外 | 0.01% | 1.53% |
参考:吉野貴晶「サザエさんと株価の関係 行動ファイナンス理論」新潮社 (2006)
※分析対象期間:1985年3月~2005年3月
※ボラテリティ=(当日高値ー当日安値)÷前日終値
上のデータを見ると、満月の日はそれ以外の日に対して騰落率が0.1%低くマイナスになっており、相場が下落しやすい傾向があるとわかります。
また、満月の日はボラテリティも約0.1%大きく、ボラが増加しやすい傾向があります。
それに対して、新月の日は騰落率、ボラテリティともに統計的に大きな差は見られません。
理論的な話はこれくらいにして、実際に日経平均やダウ平均チャートで相関性を調べてみましょう!
日経平均や個別株と月の満ち欠けの周期の関係
下のチャートは2018年の日経平均株価です。満月新月の発生日をサイト『満月新月の出現日時|こよみのページ』で調べ、チャート上に青矢印でプロットしています。
※満月・新月の出現日が取引日でない場合は、最も近い取引日のローソク足に矢印を表示しています。
上のチャートを見ると、満月や新月の出現日は相場の転換点になっていることが多いです。特に、次のような特徴があると考えられます。
- 満月:相場の天井になり、その数日後はしばらく下落しやすい
- 新月:相場の底になり、その数日後はしばらく上昇しやすい
2017年の日経平均株価も見てみましょう。すべての日で当てはまるわけではありませんが、満月や新月が相場の転換点になっているとわかります。
また、ボラテリティをみるためにATR(期間1)を表示しています。これを見ると、満月や新月で突出してボラが大きくなるといったことは見られません。
個別株もみてみましょう。下のチャートは、2018年のソフトバンク日足です。
月のサイクルが相場に与える影響まとめ
以上より、月のサイクルについて以下の仮説が立てられます。使えそうなものがあれば、トレード戦略のアイデアとして取り入れてみてください。
1.満月や新月の頃は、精神が不安定になったり感情が高ぶりやすい
衝動に駆られ、トレーディングルールを逸脱したりハイリスクなトレードをしてしまうことが多くなるかもしれません。
過去のトレード記録を見て、満月・新月ではパフォーマンスが悪化していないか見てみましょう。もしその場合は、トレード回数やロット数を制限するなど、損失を最小限に抑える対策を取りましょう。
2.新月・満月では、相場が転換する傾向がある
この前後の期間は、既存のトレンド方向に仕掛けるのは危険です。長期的なトレンドフォロー戦略は控えたほうが良いです。
3分足や5分足で、カウンター方向への短期的な逆張りが有効。
3.株価は新月の前後で上がりやすく、満月の前後で下がりやすい傾向がある
長期の買いポジションを新規に持つ場合は、新月の頃がよいかもしれません。
また、満月の日は保有買いポジションを手仕舞ったり、空売りを仕掛けるタイミングの候補になります。
※TradingViewのインジケーター「moon cycles」は、太陽と月の位置関係を指標化し、満月と新月の出現ポイントをチャートに表示することができます。
表示方法
インジケーターの検索欄で、「moon cycles」と入力しクリックする
以上、「相場のサイクル理論|月の満ち欠けが株価に与える影響とは?」という記事でした。