加重移動平均線(WMA)は、「直近の価格の動きが過去の価格よりも将来の相場の動きを予測するために重要である」という考えで、SMAを改良して作られた移動平均線です。
これはEMAと似ている移動平均線ですが、WMAはEMAより価格に追尾する機能が優れており、個人的におすすめなMAです。
この記事では、SMAやVWMAなど、他の移動平均線と組み合わせた実践的な利用方法も解説するので、ぜひ参考にしてください!
目次
- 加重移動平均線とは【線形的な重み付けを加えたMA】
- SMAと比較したWMAの4つの長所
- EMAとの違い【実際のチャートで比較】
- 加重移動平均線の5つの使い方
・20WMAと20SMAを使った、トレンドの特定方法
・押し目買いしてよいケースと見送るべきケースの見極め
・当日の目線の決め方
・WMAを利用した安全な順張り戦略
・出来高加重移動平均線の併用で精度UP
【FX】加重移動平均線とは【線形的な重み付けを加えたMA】
単純移動平均線(SMA)は、計算式の各データを平等に扱うため、直近の価格の動きに対する反応度が鈍いという欠点があります。
SMAの計算式
単純移動平均=(P1 + P2 + P3 + P4 + ... + Pn)/ n
※Pn=ローソク足の終値。重み付けは均等に分散されているので、最も古いデータ(Pn)と最新のデータ(P1)が平等に扱われる
このデメリットを克服するために開発されたのが、加重移動平均線(WMA)です。
加重移動平均線は、最新のデータ(終値)ほど計算結果に与える影響を大きくするように、計算式の各終値に重み係数を掛けています。
WMAの計算式
WMA ={P1×n + P2×(n-1) + P3×(n-2) + ・・・ + P(n-1)×2 + Pn×1 }÷(n+n‐1+n-2+・・・+2+1)
※n=WMAの期間
※P1 =最新のローソク足の終値で、P2はその1つ前のローソク足の終値。nの値が大きくなるほど、Pnは古いデータになります
上の式を見てわかるように、最新の終値には「WMAの期間の値」を掛け、それ以前の終値には古くなるに比例して小さな整数値を掛けています。
このように、WMAは線形的に重み付けをしており、終値の重要度は古くなるほど直線的に低下します。
たとえば、5期間のWMAは次のように計算されます。
WMA =(P1×5 + P2×4 + P3×3 + P4×2 + P5×1)÷(5 + 4+ 3 + 2 + 1)
=P1×5/15 + P2×4/15 + P3×3/15 + P4×2/15 + P5×1/15
上の5つのローソク足では、WMAの値(112.489)が最新のローソク足終値(P1=113.008)に引き寄せられていることがわかります。
直近の価格を最も重要と考えて、例えば5日加重移動平均線の場合、直近の終値を5倍、1日前の価格を4倍、2日前を3倍します。過去に向けて順次倍率を小さくした5日分の数値を合計し、倍率の合計で割って平均値を求め描線します。 乱高下やもち合い相場では威力が劣りますが、緩やかな相場では効力を発揮してくれます。
もうひとつ計算例を、下の画像でみてみましょう。
注意点
加重移動平均線(WMA)は、線形加重移動平均線(LWMA)とも呼ばれます。
MT4やMT5でWMAを表示したい場合は、「Moving Average」をチャートに表示して、設定の「種別」を「Linear Weighted」に変更してください。
※TradingViewのチャートでもWMAを表示することができます。
表示方法
インジケーター検索欄で「WMA」と入力してクリックする
SMAと比較したWMAの4つの長所
加重移動平均線は、SMAと比べて次の4つの点で優れています。
長所その1
上のドル円チャートでは、20WMA(青) と20SMAを表示しています。
前述したように、WMAは直近の価格に重点を置いています。そのため、WMAはSMAよりもローソク足の動きの変化に素早く反応し、価格がこのライン上できれいに反発しています。
長所その2
レンジからトレンド相場に移行する時やトレンド転換時、WMAはSMAよりも早くトレンド方向に動き始めます。
そのため、トレンドの発生を特定するのはWMAの方が得意です。
長所その3
勢いが強い急勾配のトレンド相場では、WMAでローソク足が反発することが多いです。SMAでは価格の急変動に追いつけず、レジサポラインとして機能しません。
もしSMAを利用している場合は、こういった急トレンド相場では押し目買い/戻り売りの仕掛けチャンスを逃してしまいます。
長所その4
「長期」の移動平均線では、古いデータの重要度が極端に低くなり、MAの精度を妨げる要因になります。
たとえば200期間SMAでは、200本前のローソク足も最新のローソク足も平等に扱って平均値をとるため、SMAの位置が現在の価格から乖離することが多いです。
それに対して、200期間WMAでは重み係数により古いローソク足ほど軽く扱うことで、200SMAよりも現在価格に適した動きになります。
上のチャートでも、200WMAが長期下降トレンドでのレジスタンスラインとして機能しています。
EMAとの違い【実際のチャートで比較】
WMAもEMAも直近の価格を重視していますが、その重み付けの方法は次のように異なります。
- WMAは「線形的」にデータの価値を低下させている
- EMAは「指数関数的」にデータの価値を低下させている
また、WMAとEMAでは古くなったデータの扱いが異なります。
- WMAは次の足が完成すると、最も古い終値は計算式から除外され、最新の終値が追加される
- EMAの場合は、最も古い終値は計算式から削除されず、その影響度は指数関数的に低いが残る
上の式を見てわかるように、EMAの計算式には過去のEMAが組み込まれており、そのため期間外の過去の終値も最新のEMA値に影響を与えています。
たとえば、5WMAでは5本前の終値は完全に無視されますが、5EMAでは5本前の終値も計算結果にわずかに影響を与えています。
チャート上でのWMAとEMAの違い
EMAの重み付けが指数関数的に増加していることから、「EMAはWMAよりも価格に追尾する機能が優れている」と一般的に考えられています。
ですが、実際のチャートでWMAとEMAを比較してみると、実はWMAの方がEMAよりも価格に鋭敏に反応することがわかります。
そのため、WMAはEMAよりもトレンドの発生をわずかに速く検出します。プロのトレーダーの中には、このメリットのためEMAの代わりにWMAを好んで使う人がいます。
また、レジサポラインとしてはどちらも機能しています。ただし、SMAとの比較でも述べましたが、強いトレンドではEMAよりもWMAで価格が反発することが多いです。
上のユーロドルチャートでは、下降トレンドに20EMAが追いついていません。価格はEMAまで戻らず、20WMA下で十字線を作って反発下落しています。
以上より、総合的にEMAよりWMAの方が優れていると考えられます。ほんのわずかな違いですが、EMAを使っている方はトレード分析の質を高めるために、実験的にWMAを試してみてはどうでしょうか?
関連 移動平均線とトレンドラインを使った、順張り&逆張り手法!
加重移動平均線の5つの使い方
最後に、WMAの実践的な利用方法を5つ紹介します。
1.20WMAと20SMAを使った、トレンド発生の特定方法
20WMAと20SMAの位置関係で、トレンド状態である相場を簡単に見つけることができます。
- 上昇トレンド:20WMA>20SMA
- 下降トレンド:20WMA<20SMA
上の相場では、下降トレンドが発生しています。このとき、20WMAは20SMAの下で下降しています。
そして、トレンドの後期で20WMAが20SMAを上抜けたら、トレンド終了の可能性が高いです。
50EMA&50WMAでは、長期トレンドを見つけることができます。
この2本のMAを利用した手法は、下の記事で紹介しているので、よければこちらも参考にしてください。
2.押し目買いしてよいケースと見送るべきケースの見極め
上の上昇トレンドでは、3つの買いポイント(ABC)があります。3つとも価格が20SMAを下抜けており、仕掛けてよいか悩む状況です。
先ほど紹介した、「20WMAと20SMAのトレンド判定法」を使えば、次のように簡単に判断できます。
- A&B:20WMAが20SMAを下抜けていないので、上昇トレンドはまだ継続する可能性が高いと考え、買いを仕掛けるのはOK!
- C:20WMAが20SMAを下抜けており、トレンド転換の可能性があるので、ここで仕掛けるのはリスクが高いです
3.当日の目線の決定
その日のデイトレのエントリーの方向性(目線)は、日足チャートの「価格・20WMA・20SMA」の3つの位置関係を見ることで固定することができます。
- 価格>20WMA>20SMA:日足は上昇トレンド中で陽線の出現比率が高い→当日は買い目線
- 価格<20WMA<20SMA:日足は下降トレンド中で陰線の出現比率が高い→当日は売り目線
他にも、日足のローソク足が2つのMA間にあったり、20WMAと20SMAが横ばいしている場合は、相場の方向性がはっきりしていないので、目線の固定が難しいです。
日足がこういった相場環境では、当日の1~15分足はレンジ相場になりやすいので、逆張り手法をメインにトレードしましょう。
4.加重移動平均線を利用した安全な順張り戦略
トレンドの初期~中期での「深めの押し/戻し」では、20WMAが20SMAの下/上に潜る特徴があります。
価格がトレンド方向にWMAをブレイクしたら順張りで仕掛けるタイミングです。
そして、WMAがSMAをトレンド方向にクロスしたら、トレンド再開が確定したと見て、損切りラインをWMA近くまで移動させましょう。
5.出来高加重移動平均線の併用で精度UP
WMAはトレンドの始まりを素早く捉えることができますが、その反面トレンドのフェイクを掴まされることもあります。
この騙しを減らすために、出来高加重移動平均線(VWMA)を併用することがおすすめ!
関連記事 出来高加重移動平均線(VWMA)の6つの使い方!【次世代型MA】
上のチャートのように、トレンドの発生時にWMAとVWMAが重なっているのは、出来高の大きい初動であることを示唆しており、トレンドが成功する確率が高いです。
逆に、VWMAがトレンド方向を向いていない場合は、出来高が少ない初動であり、トレンドが続かない可能性があるので気をつけてください。