重要度の高いローソク足は通常、大きな出来高を伴っています。
そこで、「移動平均線を計算するときに、終値に加え出来高も取り入れよう」、と考えて開発されたのが出来高加重移動平均線(VWMA)です。
VWMAは単純移動平均線(SMA)と組み合わせることで、新しいトレンドの早期発見や、トレンドの強さの測定、ダイバージェンスなど、多くのメリットがあります。
SMAやEMAを利用している方は、この機会にVWMAをお試しで取り入れてみてはどうでしょうか?
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目次
- 出来高加重移動平均線(VWMA)とは?計算式と見方
- VWMAの6つの使い方
・トレンド発生の前兆
・トレンド相場でのレジサポライン
・トレンドの衰退&終了のシグナル
・VWMAのダイバージェンス
・VWMAを使ったブレイクアウトトレード
・騙しのブレイクアウトの回避 - MT4・MT5のVWMAインジケータの紹介
【FX】出来高加重移動平均線(VWMA)とは?計算式と見方
出来高加重移動平均線(VWMA)とは、出来高を計算式に組み込んだ移動平均線で、各ローソク足の終値と出来高の積の平均値です。
この指標は単純移動平均に似ていますが、VWMAは出来高を重視しているため、チャート上での軌跡は少し異なります。
VWMAの計算式
単純移動平均線(SMA)は過去の終値の平均値であり、すべての終値に同じ重みを与えます。出来高の大きいローソク足も小さい足も平等に扱われます。
それに対して、出来高加重移動平均線(VWMA)は、終値ごとに異なる重みを付けます。つまり、出来高が多いローソク足の終値はより重要な値として扱われ、出来高の小さいローソク足は軽視されます。
計算式は次のとおりです。
VWMA =(C1×V1 + C2×V2 +・・・+Cn×Vn)÷(V1 + V2 + ・・・Vn)
※Cn=n日前の終値 Vn=n日前の出来高
たとえばn=2の出来高V2が大きい場合は、C2×V2の値が大きくなり、その結果n=2の終値C2の影響が大きくなります。
VWMAとSMAの違い
下のユーロドルチャートには、20期間の単純移動平均線(青)と、同じ20期間の出来高加重移動平均線(赤)、出来高の3つの指標を表示しています。
上の20SMAと20VWMAを比較してみると、2本のラインはほぼ同じ軌跡を描いていますが、乖離しているポイントも見られます。
これは上で述べたように、VWMAは出来高の大きさを反映していることが原因です。
最新のローソク足が大きな出来高をもつとき、VWMAはその終値に近づくためSMAから離れ始めます。逆に、出来高が小さい時は、VWMAはSMAに近似した動きになります。
このように、VWMAは出来高の大きさに応じて、SMAの上下を行き来します。
VWMAとSMAの関係
- 出来高大きいとVWMAはSMAから乖離する
- 出来高小さいとVWMAとSMAは重なる
→VWMAとSMAの乖離幅は出来高の大きさに比例する
VWMAの6つの使い方
VWMAを利用する場合は、SMAとの乖離に注目しましょう。これは、トレンド相場での出来高に関する重要な情報を与えてくれます。
では、VWMAとSMAを組み合わした実践的な使い方を6つ紹介します!
1.トレンド発生の前兆
重なっていた20VWMAが20SMAから乖離し始めたら、それはトレンドが発生する前兆になることが多いです。
- VWMAがSMAを上回ったとき:上昇トレンドの前兆
- VWMAがSMAを下回ったとき:下降トレンドの前兆
ただし、この時点ではトレンドが発生したと確定できません。下のチャートのように、価格が直近高値/安値を超えたらトレンドが始まったとみなします。
また、VWMAがSMAを反対方向に完全に抜けるまでは、トレンドは継続すると考えます。
たとえば上のポイントAのように、価格がMAを上抜けてもVWMAがSMAを上抜けていない場合は、まだ下降トレンドは終了していません。
価格がMAを上抜けたからといって、売りポジションを手仕舞ったり、新規買いを仕掛けるのは早計です。ここでは、戻り売りを狙うのがベターです。
- VWMA≧SMA:VWMAがSMAを下抜けるまで、上昇トレンド継続
- VWMA≦SMA:VWMAがSMAを上抜けるまで、下降トレンド継続
2.トレンド相場でのレジサポライン
10VWMAや20VWMAは、SMA・EMAと同じ様にレジスタンスライン&サポートラインとして機能します。
特に、トレンド相場における押し目買い&戻り売りの仕掛けポイントの候補になります。
また、VWMAとSMAが重なる部分は、レジサポラインの強度が高くて、きれいに価格が反発上昇/下降しやすいです。
反対に、VWMAと乖離している20SMAは反発強度が弱く、押し目買い/戻り売りの成功率がやや低いので要注意です。
3.トレンドの衰退&終了のシグナル
トレンド相場でVWMAがトレンドと反対方向にSMAとクロスするのは、出来高が減少しトレンドの勢いが低下していることを示唆しています。
たとえば下のチャートのように、上昇トレンドの途中で20VWMAが20SMAを下抜けた(=デッドクロス)ら、上昇力が低下しておりトレンドがそろそろ終了する可能性が高いです。
その後も20VWMAは20SMAの下で推移しており、最終的にレンジ相場へ移行しました。
トレンド衰退のシグナル
- 上昇トレンド:VWMAとSMAのデッドクロス
- 下降トレンド:VWMAとSMAのゴールデンクロス
また、トレンド時の押し目買い/戻り売りを仕掛けるときは、VWMAとSMAの位置関係に注目しましょう!
下の2つの押し目買いポイントを見てください。
1つ目は調整下落で価格がSMAを下抜けるも、VWMAはSMAの上で維持しています。トレンドの勢いは失っておらず、順張りは有効です。
そして、2つ目はVWMAはSMAを下回っています。トレンドが継続する可能性は低く、ここでの買いはリスクが高いので避けるべきです。
4.VWMAのダイバージェンス
VWMAを使って、ダイバージェンスを発見することもできます。
上昇トレンドでのダイバージェンス
価格は高値を切り上げているが、VWMAはSMAとデッドクロスして下抜けている
下降トレンドでのダイバージェンス
価格は安値を切り下げているが、VWMAはSMAとゴールデンクロスして上抜けている
下のチャートは、「3.トレンドの衰退&終了のシグナル」で見たチャートです。実はこの上昇トレンドでは、トレンドの終わり直前でVWMAのダイバージェンスが発生しています。
ダイバージェンス時、価格は長大陽線で高値を更新しており、一見トレンドの勢いは強いと見えます。しかし、VWMAがDCして出来高が減少していることから、これはトレンド終了直前でのバイイングクライマックスでした。
順張りの利益確定を早めにしたい方は、このダイバージェンス時の高値で利食いしてみてはどうでしょうか?
5.VWMAを使ったブレイクアウトトレード
出来高はブレイクアウトを裏付けするものであり、出来高の低いトレンドは騙しである確率が高いです。
VWMAは次のように、ブレイクアウトが成功するかどうかを見極める1つの判断材料になります。
- ブレイクアウト時に、VWMAもブレイク方向にSMAから乖離している
これまで述べたように、VWMAの乖離は出来高の増加を意味しています。
上のレンジ相場でも、上昇ブレイクアウト時にVWMAがSMAから乖離して上昇しており、このブレイクアウトは成功確率が高いと考えられます。
ここで重要なのは、VWMAとSMAの乖離幅です。乖離幅が大きいほど、ブレイクアウト時の出来高が大きく、ブレイクアウトが強いということを示唆しています。
6.騙しのブレイクアウトの回避
また、VWMAとSMAの組み合わせは、ブレイクアウトの騙し検知ツールとしても利用できます。
次のようなケースでは、ブレイクアウトが失敗になる確率が高いので要注意です。
- ブレイクアウト時に、VWMAがブレイク方向にSMAから乖離していない、またはブレイクと逆方向に乖離している
上のオージードル30分足では、下降トレンドラインを上にブレイクアウトしていますが、このときVWMAはSMAの下にあります。
そのため、ブレイクアウトは失敗に終わり、また上昇チャネル到達での逆張り売りが入ることで、その後反対方向に大きなトレンドが発生しました。
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