この記事では、ドンチャンチャネルの使い方や戦略を解説します。
目次
【FX】ドンチャンチャネルとは?
ドンチャンチャネルは、米国の投資家 リチャード・ドンチャン氏によって開発されたトレンドフォロー指標です。
これは、次の3本のラインで構成されます
- 上部バンド:直近n本の足の最高値を結んだライン
- 下部バンド:直近n本の足の最安値を結んだライン
- ミドルライン:(上部バンド - 下部バンド)÷2
ドンチャンチャネルの設定期間で一般的に使用されているのは、20、50、100、200の4つです。
日足における期間20のドンチャンチャネルは、直近1か月(=20日営業日)の最高値&最安値水準を表し、多くの市場参加者が注目しています。
※日足の場合、他にも120期間のドンチャンチャネル(=半年の最高値安値)や240期間のドンチャンチャネル(=1年間の最高値安値)も重要です
また、5分足~1時間足の下位足では、大きな設定期間である50や100のドンチャンチャネルが人気です。
※小さな期間のドンチャンチャネルでは、その高値安値水準の注目度が低く、ブレイクアウトが失敗したり、ブレイクアウトしても大きく伸びにくいケースが多いです
下のチャートでは、期間10のドンチャンチャネルを表示しています。
注目度の低い高値安値も含まれ、ブレイクアウト水準としては利用しににくいです。
ドンチャンチャネルの4つの使い方!
具体的に、ドンチャンチャネルは次のような使い方・役割があります。
- ブレイクアウト水準
- ボラティリティの測定
- 動的なレジサポライン
- トレンドやレンジ相場の発見
1.ブレイクアウトのセットアップ
ドンチャンチャネルはブレイクアウト水準として注目されます。
基本戦略
- 上部バンドを価格が越えたら買い
- 下部バンドを価格が下抜けたら売り
この戦略はレンジ相場からトレンド相場への転換時のエントリー戦略として有効ですが、トレンド発生時の順張りエントリーとしては不向きです。(押し底や戻し高値付近で仕掛けれず、損切幅が広くなるので)
※また、すべてのブレイクアウトが成功することはなく、いくつかのフィルター戦略を利用してエントリーシグナルを厳選する必要があります。(詳しくは後ほど紹介します)
2.ボラティリティの測定
ドンチャンチャネルはボリンジャーバンドのように、相場のボラティリティを測定することもできます。
- チャネルの幅が広い:価格変動が大きく、ボラティリティが高い
- チャネルの幅が狭い:価格変動が小さく、ボラティリティが低い
3.動的なレジサポライン
ドンチャンチャネルの上下のバンドは、動的なレジスタンス&サポートラインの1種であり、大きな期間(100期間や200期間など)の最高値安値ほどレジサポラインの強度が強まります。
特にレンジ相場では、多くの市場参加者がチャネル内で価格が上下動すると予測・期待しているため、ドンチャンチャネルはレジサポラインとして機能しやすいです。
※注意点として、トレンド相場ではレジサポラインとして機能せず、トレンド方向にバンドが更新し続けます。
また、ミドルラインは直近の最高値と最安値を起点に引いたフィボナッチリトレースメント50%水準であり、こちらもレジサポラインとして機能します。
トレンド相場では、ミドルラインは押し・戻しの反発水準となり、押し目買い・戻り売りポイントとして活用できます。
4.トレンドやレンジ相場の発見
ドンチャンチャネルの動きを見ることで、現在の相場環境を簡単に把握することができます。
- 上昇トレンド:上部バンドが上向き上昇(=高値が切り上がっている)
- 下降トレンド:下部バンドが下向き下落(=安値が切り下がっている)
- レンジ:3本のラインがともにほぼ平行移動(=価格が直近最高値~安値の範囲で留まっている)
ドンチャンチャネルを使ったブレイクアウト手法のテクニック
テクニック1
ドンチャンチャネルをローソク足終値で超えてエントリーする場合、ブレイクアウトの騙しに巻き込まれる可能性が高いです。
エントリー精度を高めたい場合は、ブレイクアウト発生確認後、ブレイクアウト水準で反発したタイミングで仕掛けます。
テクニック2
次の条件を満たすほど、ドンチャンチャネルのブレイクアウトのインパクトが大きく、価格が伸びやすいです。
- ドンチャンチャネルが水平である期間が長い:その最高値(最安値)の注目度が高まっている
- ドンチャンチャネルの間隔が狭い:ボラティリティが圧縮され、エネルギーが溜まっている
逆に、ドンチャンチャネルの水平期間が短い、または間隔が広い場合、ブレイクアウトしてもトレンドフォローが入りにくく失敗に終わりやすいです。
テクニック3
ドンチャンチャンネルを使ったブレイクアウトトレードの利食い方法は、次の2つがあります。
1つ目
- 買いポジション:下部バンドに沿ってストップロスを引き上げ、価格が下部バンドに到達したら利益確定
- 売りポジション:上部バンドに沿ってストップロスを引き下げ、価格が上部バンドに到達したら利益確定
この方法では、一定の距離を保ってブレイクアウトを追跡し、含み益の一部を確保しながら利益を伸ばすことができます。
関連:【FX】実践的なトレーリングストップ戦略を8つ紹介!【長所&短所】
2つ目
- ミドルラインに価格がタッチしたら利益確定する
この方法では、ブレイクアウトの終了で素早く利益を確定することができますが、上のチャートのようにブレイクアウトの途中で深い押し・戻しが入ると、その後の大きな値動きを逃すデメリットがあります。
テクニック4
期間の大きなドンチャンチャネルほど、エントリーチャンスは少なくなりますが、ブレイクアウトが成功したときに大きなトレンドが発生しやすいです。
それに対して、期間が小さいドンチャンチャネルほど、ブレイクアウトの発生頻度が多いですが、騙しの発生確率が高くブレイクアウト成功時に大きなトレンドにつながりにくいです。
そのため、ドンチャンチャネルをブレイクアウト手法に使いたい場合は、期間50や100などがおすすめになります。
【4つ紹介】フィルター戦略で、ドンチャンチャネルのシグナルの精度を上げよう!
ドンチャンチャネルのブレイクアウトは100%成功しません。
他のブレイクアウト手法と同様に騙しが発生するため、いくつかのフィルター戦略を利用してエントリーシグナルを厳選し、エントリー精度を上げる必要があります。
フィルター戦略1
長期移動平均線を使って、長期トレンド方向に逆行するブレイクアウトを除外します。
フィルター例
- 価格が200SMAの上で推移中:上部バンドの上抜けでの買いのみ有効
- 価格が200SMAの下で推移中:下部バンドの下抜けでの売りのみ有効
フィルター戦略2
ボラティリティが極端に低い相場は、爆発的なブレイクアウトが発生する前の静けさです。
たとえばATRを使って、ボラティリティが低下した相場を検出します。
フィルター例
- 日足:ATR(14)が直近半年(または1年間)の最低値と同値orそれ以下
- 30分足~1時間足:ATR(14)が直近1か月の最低値と同値orそれ以下
- 5分足~15分足:ATR(14)が直近5日間の最低値と同値orそれ以下
下の1時間足では、ブレイクアウト直前のATR値が直近1か月の最低値を下回っています。
関連:相場のボラティリティを解析!ATRボリンジャーの使い方を徹底解説!
フィルター戦略3
上位足(1時間足、4時間足、日足)が上昇トレンドを形成していると、5分足や15分足チャートのドンチャンチャネルの上昇ブレイクアウトの成功確率が高まり、下降ブレイクアウトの成功確率は低下します。
関連:【MT4】トレンド分析に役立つインジケーター9選!【強さ・判定・転換】
フィルター戦略4
価格変動の裏にある出来高の変化を測定する指標、オン・バランス・ボリューム(OBV)を利用します。
OBVは買い勢力・売り勢力それぞれのパワーや現在の相場の優位な方向などを、出来高の観点から測定します。
フィルター例
- OBVの100EMAが上向き:買いの出来高が増加している→買いOK
- OBVの100EMAが下向き:売りの出来高が増加している→売りOK
ダブルボラティリティ・ブレイクアウトシステム
ケルトナーチャネルはボリンジャーバンドとよく似た指標で、どちらも相場のボラティリティの大きさをバンド幅で表します。
ドンチャンチャンネルとボリンジャーバンドの違いは?
ドンチャンチャンネルは直近最高値と最安値を使用してボラティリティを追跡するのに対し、ボリンジャーバンドは平均値からの標準偏差でボラティリティを追跡します。
そのため、ドンチャンチャネルでは外れ値(価格の異常な変動)の影響を直接受けるのに対し、ボリンジャーバンドはデータを平滑化することで外れ値の影響が少しマイルドになります。
この2つを組み合わせて低ボラティリティ相場を発見し、ブレイクアウトを仕掛けるポイントを厳選することができます。
使用する指標
・100期間のドンチャンチャネル
・20期間のボリンジャーバンド(±2σ)
セットアップ
100期間のドンチャンチャネルがスクイーズを形成し、同時に20期間のボリンジャーバンドがドンチャンチャネル内でスクイーズを形成している
上の2つのスクイーズを価格がブレイクアウトしたらエントリーのチャンスです。
タートルトレーディングシステム
ドンチャンチャネルは、伝説の商品先物トレーダー リチャード・デニス氏のブレイクアウト戦略「タートルトレーディングシステム」でも使われています。
ここでは、簡単にそのルールを紹介します。
参考書籍:伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術|徳間書店
システム1
システム1では、20期間のドンチャンチャネルを使います。
エントリールール
- 買い:価格がドンチャンチャネル(20)の上部バンドを上抜けたとき
- 売り:価格がドンチャンチャネル(20)の下部バンドを下抜けたとき
タートルは、市場の値動きが横ばいから上向きに転じると買い、下向きの値動きが生じると空売りし、トレンドが終わったとき、つまり上向きか下向きの値動きが横ばいに戻ったら、市場を退出するよう教わった。
フィルターとして、2本の指数平滑移動平均線を使い、長期トレンドに逆行するブレイクアウト取引を除外します。
トレンドと逆方向に生じるブレイクアウトは、相場に影響を与えるほどの継続性を持つことがほとんどないからだ。こうしたブレイクアウトはまた、市場がドンチャン・トレンド・システムに適した状態でないことも示している。
トレンド・フィルター
- 50期間EMAが300期間EMAより高い市場:買いポジションのみ有効
- 50期間EMAが300期間EMAより低い市場:売りポジションのみ有効
利食いルール
- 買いポジション:10期間の最安値(=10期間のドンチャンチャネル下部バンド)に到達したとき
- 売りポジション:10期間の最高値(=10期間のドンチャンチャネル上部バンド)に到達したとき
ただし、前回のブレイクアウトが勝ちトレードの場合、次のエントリーシグナルは回避します。
そして、システム1でのエントリーを回避した場合、大きな動きを逃さないために、システム2(55期間のドンチャンチャネル)を採用します。
システム2
システム2では、55期間のドンチャンチャネルを使います。
エントリールール
- 買い:価格がドンチャンチャネル(55)の上部バンドを上抜けたとき
- 売り:価格がドンチャンチャネル(55)の下部バンドを下抜けたとき
フィルタールールはシステム1と同じものを採用し、利食いルールは20期間のドンチャンチャネルを使います。
利食いルール
- 買いポジション:20期間の最安値を下抜けたとき
- 売りポジション:20期間の最高値を上抜けたとき