この記事では、出来高指標「オン・バランス・ボリューム(OBV)」について、次の6つの項目を解説します。
出来高を分析・解析する指標として、個人的におすすめな指標なので、出来高分析に興味がある方はぜひ参考にしてください!
目次
【FX】オン・バランス・ボリューム(OBV)とは?
オン・バランス・ボリューム(OBV)は、出来高の推移を追跡する「出来高累積」指標です。
これは、グランビルの法則で有名な米国チャート分析家ジョゼフ・E・グランビル氏によって開発された指標です。
グランビル氏は、出来高が市場の背景にある価格を動かす力と考え、出来高の変化に基づく市場の大きな価格変動を捉えるためにOBVを開発しました。
OBVの計算式はつぎのとおりです。(Cn:n日目の足の終値、Cn-1:n-1日目の足の終値)
- Cn>Cn-1→ n日目のOBV =n-1日目のOBV + n日目の出来高
- Cn<Cn-1→ n日目のOBV =n-1日目のOBV - n日目の出来高
- Cn=Cn-1→ n日目のOBV =n-1日目のOBV
このようにOBVは、現在のローソク足終値が前の終値より高い場合、その足の出来高を前回のOBVに足し、現在のローソク足終値が前の終値より低い場合、その足の出来高を前回のOBVから引いて、出来高の変化を追跡します。
計算例 | 終値 | 出来高 | OBV |
---|---|---|---|
1日目 | 104.39 | 22661 | 0 |
2日目 | 104.76 | 19000 | 19000 |
3日目 | 105.11 | 24329 | 43329(=19000+24329) |
4日目 | 105.11 | 15000 | 43329 |
5日目 | 104.69 | 19529 | 23800(=43329-19529) |
上の表でわかるように、OBVの数値はチャートの開始点に依存します。
そのため、OBVの数値や符号は大きな意味はなく、OBVの方向や動きに注目しましょう!
OBVの基本的見方
見方1
- OBVの上向き上昇:ローソク足終値が前回終値を繰り返し超えている→短期~中期の上昇トレンドが発生
- OBVの下向き下落:ローソク足終値が前回終値を繰り返し下回っている→短期~中期の下降トレンドが発生
また、OBVのラインの傾き(=OBVの変化量)は、価格の上昇力・下落力を分析するのに役立ちます。
見方2
- OBVの上昇幅:その陽線の出来高の大きさであり、これは価格を押し上げようとする買い勢力のパワーを表す
- OBVの下落幅:その陰線の出来高の大きさであり、これは価格を押し下げようとする売り勢力のパワーを表す
では、具体的な使い方・分析方法を見てみましょう。
トレンド相場でのOBVの使い方
トレンドの高値安値に対応するOBVの高値や安値に注目することで、トレンドが継続するかどうかやトレンド終了の兆候を見つけることができます。
- OBVの高値安値がともに切り上げる:上昇トレンドの継続
- OBVの高値安値がともに切り下がる:下降トレンドの継続
上昇トレンド相場では、OBVは価格とともに上昇します。
このとき、OBVの高値切り上げは、価格を押し上げる買いの出来高が増加していることを意味し、OBVの安値切り上げは、上昇トレンドに逆らう売りの出来高が減少していることを意味しています。
そして、押し安値に対応するOBV安値をOBVが下回ったら、トレンド高値圏での売り圧力が強まり、上昇トレンドの継続終了につながる危険性があるので注意してください。
また、グランビル氏はOBVに20期間移動平均線を加えることを推奨しています。
- 20SMAが上向き上昇している間は、上昇トレンドが継続していると判断できる
- OBVが20SMAを下抜くと、上昇の勢いが少し弱まっているので、ここでの買いは少し危険!
- 20SMAの向きが転換するのは、トレンドが転換するサイン
※注意するパターンとして、OBVの上昇を伴わない上昇トレンドには気を付けてください。
たとえば、上の1時間足チャートでは、スパイク&チャネルを形成して上昇トレンドが発生していますが、このときのOBV(=出来高)は大きく上昇していません。
このようなトレンドは、短命で上昇が終わることが多く、長期トレンドになりにくいです。
OBVのダイバージェンス
OBVのダイバージェンスは、VROCと同じように価格と出来高の乖離を捉え、トレーダーにトレンドが終了する可能性があることを知らせてくれます。
上の上昇トレンドでは、OBVの弱気のダイバージェンスが発生しています。
高値1と比べ高値2のOBVの数値が低いですが、これは高値2周辺に流れ込む出来高が少なく、この価格帯での買い需要が低いことを示唆しています。
OBVを使ったブレイクアウト戦略
グランビル氏は、出来高は価格に先行すると考え、そして出来高の推移を追跡するOBVは価格の動き始める(=トレンドやブレイクアウトの発生)兆候を捉えることができると著書で述べています。
たとえば、レンジ内でのOBVの動きで、レンジ内部の蓄積された出来高の偏りを調べることで、ブレイクアウトが成功する方向を予測することができます。
- レンジ内でOBVが上昇:レンジ内で買い圧力が高まっている → 上昇ブレイクアウト発生しやすい
- レンジ内でOBVが減少:レンジ内で売り圧力が高まっている → 下降ブレイクアウト発生しやすい
上のレンジ相場では、OBVがじわじわと上昇し、高値安値を切り上げています。
そのため、レンジ下限での逆張り買いやブレイクアウト買いが有効であり、下方向のブレイクアウトは騙しになる可能性があるので注意してください。
また、レンジ内でのOBVの急騰・急落の動きも、ブレイクアウトの方向を予測するヒントになります。
上のチャートでは、レンジ内部後半でOBVが全体的に下落しています。
そして、ポイントAでは急落し、レンジ内部で大きな売りの出来高が投下され、買い売りの均衡が売り勢力側に崩れています。
他にも、ブレイクアウト時に、ブレイクアウト水準に対応するOBV高値(安値)をOBVが同時に超えていない場合は、ブレイクアウトをフォローする出来高が少なく、ブレイクアウトが失敗する可能性があります。
上のチャートでは、上昇トレンドの途中で、高値圏でレンジを形成しています。
1回目のブレイクアウトでは、OBVの上昇が弱く(=上昇を支えるだけの出来高が少ない)、一旦レンジ内に価格が回帰しました。
そして、その直後の2回目のブレイクアウトでは、OBVがトレンドラインを超えてしっかりと上昇しています。
ブレイク3波では、レンジ内のOBV最高値をOBVを超え、価格は大きく上昇しました。
もう1例見てみましょう。
次のチャートでは、上昇チャネルが2つ発生しています。
1つ目のチャネル
下ブレイクアウトしましたが、ブレイク1波のOBVの下落は小さく、その直後に下降トレンドラインを上抜け反転上昇しました
2つ目のチャネル
ブレイク1波でのOBVは1つ目のチャネルブレイクアウトと比べて下落幅が大きく、その後もブレイクアウトが継続し大きな下落となりました
OBVで機関投資家の資金を追え!
市場を大きく動かす機関投資家やヘッジファンドは、取引量の少ない日・時間帯に、動きのない市場にポジションを段階的に入れます。
OBVは、このスマートマネーが活発になるタイミングを捉えるために開発されました。
ポイント
❶機関投資家は、閑散としているレンジ相場や衰退した下降トレンドで静かに買い始めます。
❷この買い込みにより、市場が横ばい(弱い下落)の状況下で、出来高がじわじわと増加します。
❸買いの出来高が売りの出来高を上回り始めると、価格が上昇に転じます。
❹そして、この上昇トレンドに気付いた個人投資家による買いにより、上昇トレンドの勢いを後押しします。
❺最後に、トレンドに追随する大衆の買いが入るころには、機関投資家は買いポジションを売却し、市場から撤退します。
具体的例を下のポンド円日足チャートで簡単に見てみましょう。
安値圏で相場が横ばいレンジを形成しています。
このときのOBVを見ると、価格が大きく変動していないにもかかわらず、トレンドラインを超えるOBVの大きな上昇で、レンジ内で大きな買いポジションが仕込まれていることが確認できます。
このようにOBVは、トレンドやブレイクアウトの発生を予兆する先行指標として、トレンドの発生直前や直後の早い段階でポジションを建てるのに役立ちます。
OBVを使えば、フラッグやダブルボトムの成否を見極めることができる!
OBVの動きを見ることで、フラッグやダブルボトムなどのチャートパターンの成功・失敗を見極めるヒントが得られます。
具体的に見てみましょう。
下のユーロ円1時間足では、上昇フラッグが形成しています。
このフラッグ内部(=調整下落)のOBVを見てみると、OBVが下落することなく段階的に上昇しています。
これは、フラッグ内部では価格を下げようとするとする売りの出来高が少ないことを示唆しています。
このように、フラッグ内部の売り圧力が弱い場合、フラッグの上方向のブレイクアウトで売り勢力の抵抗が弱く、上ブレイクアウトが成功しやすいです。
もう1例をみていましょう。
上のフラッグ内部の後半では、価格が下落しているのに対してOBVが上昇しています。
これはフラッグ内部で買いの出来高が増加し、買い圧力がじわじわと高まっていることを意味しています。
フラッグ失敗例を見てみましょう。
上のチャートでは、フラッグ内部のOBVが大きく下落しています。
これはフラッグ内部の売り出来高が大きく、上方向のブレイクアウトが成功しにくいケースになります。
この場合、フラッグ完成による上昇トレンド継続ではなく、下降トレンドへの転換につながることが多いで要注意です。
また、ダブルトップ/ボトムやヘッド&ショルダーズの見極めでもOBVが役立ちます。
たとえば、下のチャートは、安値圏でダブルボトムを形成しています。
2つ目のダブルボトム安値のOBVを見ると、前回安値のOBVより大きく数値が下落しておらず、切り上がっています。
これは価格を押し下げようとする力が低下していることを示唆し、その後のダブルボトムの完成で本格的な上昇トレンド発生につながる可能性が高いと考えられます。
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アラート機能つき!OBVのMT4・MT5インジケーターの紹介!
このインジケーターは、アラート機能やMTF機能を搭載したOBVインジケーターです。
下のドル円5分足では、1時間足OBVを表示しています。
OBVの表示したい時間足は、設定の「OBV Timeframe」で変更できます。
また、設定の「Stepless」で、上位足OBVの表示方法を指定できます。(true:滑らかなライン、false:階段状)
また、アラート設定は次の4つがあります。
・OBV Line Crossed Zero Level After Bar Closed:ローソク足確定時に、OBVが0水準とクロス
・OBV Line is Crossing Zero Level Before Bar Close:ローソク足形成中に、OBVが0水準とクロス
・The Direction of OBV Line Changed After Bar Closed:ローソク足確定時に、OBVの方向が転換
・The Direction of OBV Line is Changing Before Bar Close:ローソク足形成中に、OBVの方向が転換
上のサイトでインジケーターをダウンロードできない場合は、「MT4・MT5インジケーターがダウンロードできない場合の解決策」をご覧ください
※また、TradingViewでもMTF機能つきOBVが利用できます
表示方法
インジケーター検索欄で、「OBV」と入力してクリックする