この記事では、ケルトナーチャネルについて、次の7つの項目を解説します。
ブレイクアウト戦略やトレイリングストップ戦略、環境認識など、様々な使い方があるのでぜひ参考にしてください!
目次
【FX】ケルトナーチャネルとは?
ケルトナーチャネルは、ボラティリティの変化を視覚化するトレンド指標で、移動平均線とATRバンドで構成します。
ケルトナーチャネルの役割は、主に次の3つです。
- ATRバンド幅で、現在の相場のボラティリティを把握する
- ATRバンドの形状で、トレンドやレンジ、ブレイクアウトを認識する
- 価格とATRバンドの距離で、買われすぎ・売られすぎ状態を見極める
計算式
ケルトナーチャネルは、1960年代にチェスター・ケルトナー氏によって開発されました。
※初期のケルトナーチャネルの計算式等について知りたい方は、「ケルトナーチャネル̩̩|アイネット証券」を参考にしてください
1980年代に、リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ氏によって改良が加えれられ、この改良型ケルトナーチャネルが現在の一般的なケルトナーチャネルになります。
計算式は、次のとおりです。
- 中央線:EMA(20期間)
- 上バンド:EMA(20期間)+α × ATR(β期間)
- 下バンド:EMA(20期間)-α × ATR(β期間)
βはATRの期間で、一般的に20が使われます。
他にも、10期間や50期間のATRも使われますが、個人的に20期間がおすすめです。
理由
下のチャートは、上と同じ通貨ペア・期間のもので、10期間ATRのケルトナーチャネルを表示しています。
見てわかるように、バンドの形はほぼ同じですが、10期間のほうがバンドの形が小刻みに上下動し、ノイズ的な乱れがあります。
また、50期間ATRのケルトナーチャネルも20期間ATRのものとほぼ同じ軌跡を描きますが、50期間のほうが価格感度が鈍く、バンドの動きが現在の値動きに遅れて動いています。
※短期のボラティリティの変動を捉えたい場合はβ=10、長期のボラティリティの変化を捉えた場合はβ=50(100)にします
また、αはATRの係数を表し、2が一般的です。
※他にも、α=1や3も使われます。各係数のバンドの使い方は、後ほど紹介します
係数αが小さいほど、ケルトナーチャネルのバンド幅が狭まり、ローソク足がバンドとぶつかったり、バンドを超える回数が増えます。
逆に、αが大きいほど、バンドの幅がそれに比例して大きくなり、αを2倍にすると、バンド幅も2倍に拡大します。
※α≧4はバンドが価格の外側に大きく外れ、バンドがレジサポラインとして機能しません。
※MT4やMT5では、様々なケルトナーチャネルのインジケーターを利用できます。
>【MT4】ケルトナーチャネルのインジケーター3選!
>【MT5】ケルトナーチャネルのインジケーター4選!
ケルトナーチャネルでトレンド発見&トレンドの強さ解析
ケルトナーチャネルの中心線と2本のATRバンドが平行で上向き上昇している局面は、上昇トレンドが発生しています。
また、下向き減少している局面は、下降トレンドが発生しています。
そして、このときのローソク足とバンドの位置関係でトレンドの強さを次の3つに分けることができます。
上昇トレンドの強さの判定法
パターン1
ローソク足が2×ATRバンドの上で推移:上昇力が高い、強い上昇トレンド
ローソク足がバンドを下回ると、トレンドの勢いが1段階減速します。
上の相場では、強トレンド時は押し目で20EMAまで回帰せず、浅い押しで反発上昇を繰り返しましたが、減速後は20EMAで押し目が入るようになりました。
このように、ローソク足が2×ATRバンドの上下どの位置にあるかで、押しの深さが異なります。
バンド上で上昇している場合は、浅い押しでサクサク上昇するので、仕掛けが遅れないように気をつけましょう!
パターン2
ローソク足が1×~2×ATRバンド間で推移:トレンドの勢いがそこそこ強いトレンド
このケースでは、1×ATRバンドがレジサポラインとして強く機能します。
下の下降トレンドでも、-1×ATRバンドがサポートラインとしてローソク足の上値の抑え、戻り売りポイントを提供しています。
そして、ローソク足が-1×ATRバンドを上抜けたら、トレンド転換orレンジ相場への移行の可能性があります。
パターン3
ローソク足が2×ATRバンドと20EMA間を往復:上昇力が弱いトレンド
長期トレンドの終了間際や、調整段階でよくみられるパターンで、どちらもトレンド方向への勢いが弱いことを示唆しています。
また、2×ATRバンドと3×ATRバンドの距離で、トレンドの勢いを分析することもできます。
2つのバンドの距離が拡大するのは、トレンド方向の勢いが一時的に衰退しているシグナルになります。
このときの押し目は20EMAを大きく下回るほどの深い調整下落が発生することがあり、要注意すべき局面になります。
【小技】ケルトナーチャネルでATR損切水準を表示する方法
損切水準の位置をATRで決定している方は、ケルトナーチャネルを使って、損切水準の位置を簡単に表示することができます。
ケルトナーチャネルの設定は、次のようにします。
買いエントリーの場合
- EMAの期間:1
- EMAの適用価格:安値
- 係数α=1 (ATRの期間はお好みで)
この設定により、EMAは各ローソク足安値を結び、下のATRバンドは「ローソク足安値からATR数値分、下に離れた水準」に表示されます。
下のATRバンド=EMA(1期間)ー1×ATR(β期間)
これにより、たとえば押し目買い時の損切を、押し底の足の安値からATR数値分離した位置に置きたい場合、わざわざATRの数値を読み取ってローソク足安値から引いて損切水準を計算する手間を省くことができます。
関連 カウンタートレンドラインの使い方!【高勝率エントリーポイント!】
※損切水準を狭めたい場合は、係数αを小さくします。α=0.5では、損切水準の幅がα=1の半分になります。
※売りエントリーの場合、「EMAの適用価格:高値」にします
【分割決済】ケルトナーチャネルを使ったトレイリングストップ戦略
ケルトナーチャネルは、トレンドフォロー手法のトレイリングストップ水準として利用することもできます。
下のチャートで、具体的に見てみましょう。
下降トレンドラインのブレイクアウト4波(20EMAでの押し目買い)で買いを仕掛けたとしましょう。
トレイリングストップを20EMA下に置いた場合、利益が十分に伸びる前にストップロスにかかってしまいます。
それに対して、-2×ATRバンドは、十分に価格から距離を保って上昇トレンドを追尾するため、トレンドの終わりまで利益を伸ばすことができます。
ローソク足が-2×ATRバンドにタッチしたら、買いポジションを手仕舞います。
また、-2×ATRバンドと-3×ATRバンドを使った分割決済で、さらに利益を伸ばすこともできます。
戦略
- -2×ATRバンドに価格が到達したら、買いポジションの半分を利益確定
- -3×ATRバンドに価格が到達したら、残り半分のポジションを利益確定
-3×ATRバンドは-2×ATRバンドよりローソク足との距離が遠いため、より大きな上昇の動きを追尾することができます。
日足や4時間足のトレンドにうまく乗った短期足順張りポジションに有効な戦略です。
※分割決済を行う場合は、最小取引単位が小さいFX会社を選ぶ必要があります。
たとえば、1万通貨を2分割決済する場合、5000通貨ずつ決済する必要があり、最小取引単位が1万通貨以上のFX会社では分割決済を行うことができません。
ケルトナーチャネルを使った、ブレイクアウト戦略
ケルトナーチャネルのスクイーズは、ボリンジャーバンドのスクイーズのように、ブレイクアウト戦略に利用できます。
ローソク足終値が2×ATRバンドを超えたら、ブレイクアウト方向に仕掛けます。
利食い戦略は、上で紹介したトレイリングストップ戦略が有効です。
注意ポイント
ローソク足1本のみやヒゲのみでバンドを超えるのは、騙しに遭う危険性があります。
仕掛けの確実性を高めたい場合は、ローソク足2本が連続してバンドを超えたのを確認してエントリーしましょう。
ブレイクアウトでは強い勢いで一方向に動くため、基本的にローソク足がバンド外でブレイクアウト方向に進行します。
そのため、ブレイクアウト時に2×ATRバンドを超えないケースは、ブレイクアウトの勢いがやや弱いことを示唆しています。
この場合、ブレイクアウトは長続きせず、短命で終わることが多いです。
また、下のレンジブレイクアウトのように、ブレイクアウトの騙しになることもあります。
ブレイクアウトフィルター
レンジブレイクアウト1波がケルトナーチャネルの±2×ATRを超えない場合は、ブレイクアウト失敗の可能性があるので、エントリーは避けよう!
ケルトナーチャネルとボリンジャーバンドの違い
ボリンジャーバンドもケルトナーチャネルもボラティリティを分析するテクニカル指標ですが、
ボリンジャーバンドは20SMA&標準偏差を使い、ケルトナーチャネルは20EMA&ATR(真の値幅)を使ってボラティリティの変動を表します。
関連 ケルトナーチャネルとボリンジャーバンドは相性抜群!使い方4選!
そのため、バンドの動きや形状、価格感度は異なり、具体的に次のような点で異なります。
1.スクイーズの動き
スクイーズはボリンジャバンドのほうが幅が狭く、またスクイーズへ移行するタイミングが速いです。
2.レジサポラインとしての注目度
ボリンジャーバンドの±2σバンドのほうが、ケルトナーチャネルのATRバンドよりレジサポラインとして機能しやすいです。
3.ブレイクアウト時の位置関係
ブレイクアウトなどの価格の急騰・急落時、±2σバンドはローソク足に張り付いて動きますが、ATRバンドはローソク足の内側にあります。
4.バンドの転換の速さ
エクスパンション後の、トレンド方向のバンドの転換はボリンジャーバンドのほうが早いです。
200期間ケルトナーチャネルは、環境認識に役立つ!
EMA200期間、ATR(20期間、係数2)のケルトナーチャネルは、一目均衡表の雲のような役割をもちます。
1.価格が上昇雲の上で推移しているとき、長期上昇トレンド発生中
このとき、2×ATRバンドがサポートラインとして機能し、上昇トレンドを下支えます。
買い優勢な相場環境になるので、買い目線で固定しましょう。
反対に、価格が下降雲の下で推移しているとき、長期下降トレンド発生中です。
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2.価格がバンド内部にあるとき、相場が荒れやすく、レンジ相場になりやすい
特に、バンド幅が分厚いほど、価格がバンドを外抜けようとするのが難しく、レンジ相場が長引きやすいです。
3.上昇トレンドで、雲を下抜けるとトレンド転換の可能性あり!
バンド幅が狭いほど、価格が雲を抜けやすいです。
逆に、バンド幅が広いほど、価格が雲を外抜けにくく、トレンドが新たに発生しにくいです。