この記事では、「ATRチャネル」の使い方や戦略を解説します。
ATRチャネルは、ATRにもとづくボラティリティの大きさを視覚化する指標で、利食いや損切り、ボラティリティブレイクアウト手法などマルチツールとして活躍します!
目次
ATRチャンネルとは?【定義や計算式】
ATRチャネルは、移動平均線とその上下に計6本のATRバンドで構成するテクニカル指標です。
この指標では、チャネルの中心は指数移動平均線(EMA)です。
そして、上下のバンドはEMAを基準にATRの倍数分離れた水準に表示されます。
計算式は、次のとおりです。
計算式
- 中心線:n期間EMA
- ±1ATRバンド:中心線 ± x × ATR
- ±2ATRバンド:中心線 ± y × ATR
- ±3ATRバンド:中心線 ± z × ATR
※n・x・y・zはパラメーターです
推奨されているパラメーターの設定は、(n,x,y,z)=(20 , 1.4 , 2.8 , 4.2)です。つまり、ATRチャンネルの各ラインは次のようになります。
一般的なATRチャネルの設定
- 中心線:20期間EMA
- ±1ATRバンド:20EMA ± 1.4ATR
- ±2ATRバンド:20EMA ± 2.8ATR
- ±3ATRバンド:20EMA ± 4.2ATR
ボリンジャーバンドとの違いは?
ATRチャネルは、ボリンジャーバンドとよく似た指標です。
この指標では、ATRに基づいてボラティリティが測定され、ボリンジャーバンドのように相場の価格変動の大きさをローソク足上で視覚化することができます。
ボリンジャーバンドとの相違点は次のとおりです。
ATRチャネル | ボリンジャーバンド | |
---|---|---|
中心線 | 指数移動平均線 | 単純移動平均線 |
ボラの測定基準 | 価格の平均変動幅 | 標準偏差 |
ボラティリティの測定基準が異なるため、バンドの形や動きが微妙に異なります。
また、ATRチャネルの各バンドは、ボリンジャーバンドのσバンドと比べてレジサポラインとしての注目度が低く、逆張り戦略で機能しにくいです。
ATRに基づいた利食い・損切り戦略を使いたいトレーダーにおすすめです。
では、ATRチャネルの見方や使い方を具体的に見てみましょう!
ATRバンドでボラティリティを分析しよう!
相場は低ボラティリティと高ボラティリティのサイクルを繰り返します。
そのため、トレードの運用システムやポジション管理・環境認識はすべて、相場のボラティリティを考慮する必要があります。
ATRチャネルでは、各バンドの間隔でボラティリティの高さを判定します。
つまり、バンドの幅が広いほどボラが高く、幅が狭いほどボラが小さいです。
また、ATRチャネルの幅の広さ(=ボラの大きさ)でポジションサイズを調整することもできます。
ボラティリティが高いほど価格が急変動する可能性があり、その分リスクの高いトレードになります。
たとえば、ATRチャネルの幅が異常に広い場合は、相場が上下に激しく乱高下する危険性があるので、取引サイズ(ロット数)を小さくし、リスクを最小限に抑えましょう。
ATRチャネルを使った損切り戦略
損切りの置く位置は、ノイズ(価格の微小変動)を考慮する必要があります。
このノイズによるストップ刈りを避けるのに、価格変動の平均値を算出するATRは最適です。
ATRチャネルでは、ストップロスに±1ATRバンドを利用します。この戦略は、特に順張りやブレイクアウト手法でおすすめです。
損切りの置く位置
- 買いポジション:エントリーしたローソク足の、-1ATRバンドの水準に損切を置く
- 売りポジション:エントリーしたローソク足の、+1ATRバンドの水準に損切を置く
上の上昇トレンドでは、20EMAでの反発による押し目買いが仕掛けポイントです。
このとき、損切りは-1ATRバンドの水準に置きます。
価格が高値を更新するたびに、損切り水準を-1ATRバンドに沿って切り上げましょう。これをトレーリング・ストップ戦略といい、利益を大きく伸ばすことができます。
そして、ローソク足が-1ATRバンドにタッチしたら、利益が乗った買いポジションを利益確定します。
関連:【FX】実践的なトレーリングストップ戦略を8つ紹介!【長所&短所】
トレンド&レンジの検出
7本のバンドの傾き・方向で、トレンドの発生を見つけることができます。
トレンド判定法
- 上昇トレンド:チャネルラインが全て上向き
- 下降トレンド:チャネルラインが全て下向き
特に、価格が中央線に回帰せず、+1~+3(-1~-3)のATRバンドに沿って上昇(下降)する「バンドウォーク」状態では、非常に勢いの強いトレンドが発生していると考えられます。
また、各バンドの傾きが水平で推移しているときはレンジ相場です。
下のチャートでは、ATRバンドの間隔が狭く、ボラティリティが低いレンジになります。
このようなボラティリティの低いレンジ相場は、上下にふらふらと価格が動くため、逆張りで仕掛けにくいので要注意です。
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トレンドの反転を示唆する2つのシグナル
トレンド相場の終わりでの「バンド幅の収縮」は、トレンドを継続させる力が低下していることを意味しており、トレンドの転換やレンジ相場へ移行する可能性が高いです。
また、ローソク足が±3ATRバンドを大きく外側にオーバーしたときは、その揺り戻しで相場が逆方向に急反転する可能性があるので気をつけましょう。
下のチャートではトレンドラインをブレイク後、ローソク足が+3ATRバンドを外にオーバーし、ブレイクアウトが終了しました。
ATRチャネルのボラティリティ・ブレイクアウト手法
ATRチャネルはボラティリティ・ブレイクアウト戦略にも利用できます。
「-2~+2ATRバンド内で価格が小刻みに動いている」圧縮レンジは、ブレイクアウトすると大きく相場が動く確率が高いです。
仕掛け例
- エントリー:2つ目のバンドを終値で外抜けたら、ブレイク方向に仕掛ける
- 利食い:3ATRバンドが内側に閉じたら利益確定
- 損切り:反対方向の2or3ATRバンドの水準に置く
関連:【価格の破裂】ATRボリンジャーを使ったボラティリティ・ブレイクアウト手法
ATRチャネルのMT4・MT5のダウンロードサイト&設定方法
下記のサイトからダウンロードできます。
参考:図解|MT4&MT5にカスタムインジケーターを追加する2つの方法
ATRチャネルの設定
各パラメータは、「パラメーターの入力」タブで決めます。一般的な設定は下の画像を参考にしてください。
・Period ATR :ATRを計算するための期間
・MA_Periods:MA(中心線)の期間
・MA_type:MAの種類 0:SMA 1:EMA 2:SMMA 3:LWMA
・Mult_Factor1:最初のバンドを表示するためにATRに適用される乗数
・Mult_Factor2: 2番目のバンドを表示するためにATRに適用される乗数
・Mult_Factor3:3番目のバンドを表示するためにATRに適用される乗数
たとえば「Mult_Factor2=5」なら、±2ATRバンドは中心線から上下に5×ATR分離れた位置に表示されます。
各ラインの色は、「パラメーターの入力」タブで調整できます。
#0:中心線
#1:+1ATRバンド
#2:-1ATRバンド
#3:+2ATRバンド
#4:-2ATRバンド
#5:+3ATRバンド
#6:-3ATRバンド