この記事では、モメンタム指標について、次の9つの項目を解説します。
モメンタム指標を利用している方はぜひ参考にしてください!
目次
モメンタム指標とは?【計算式】
ブレイクアウト&トレンドフォロートレーダーは、相場の勢いに注目することで、トレンドやブレイクアウトが成功しやすい通貨ペアや銘柄を見つけ出します。
この価格の動きの強さ(価格変化の速度)を評価する指標の1つが「モメンタム」です。
モメンタムは、現在の価格を特定の過去の価格で割って「市場価格の変化率」を算出します。
計算式
- モメンタム = 現在の価格 ÷ n本前の足の終値 × 100
計算例:期間(n)=20のモメンタム
現在の価格=107.961円 20本前の足の終値=108.690円なので、
M =107.961 ÷ 108.690 × 100 =99.33
モメンタムは、100水準を中心として上下に振動するオシレーター指標です。モメンタムの数値と100水準の関係性は、次のとおりです。
- M=100:現在の価格=n本前の足の終値
- M>100:現在の価格は、n本前の終値より高い
- M<100:現在の価格は、n本前の終値より低い
また、モメンタムの数値は100から大きく乖離するほど、現在の価格がn本前の終値から離れており、価格の変化率が大きいことを意味しています。
- モメンタムの数値大:価格の上昇率が高い
- モメンタムの数値小:価格の下降率が高い
注意!モメンタムの式は2つある
実は、モメンタムの式は2つあります。1つ目は上で紹介した式で、2つ目は下の式になります。
計算式
- モメンタム = 現在の価格 - n本前の足の終値
証券会社によって、比率と差のどちらを計算式に採用しているかは異なるので注意してください。
MT4・MT5では、1つ目の式が使われているので、この記事では比率を使ったモメンタム(=P÷Pn×100)で解説します。
使い方や考え方は、差を使ったモメンタムでも利用できるので、ぜひ参考にしてください。
※MT4やMT5では、様々なモメンタムインジケーターを利用できます。
>【MT4】モメンタムのインジケーター4選!【アラート・ダイバージェンス検知・MTF機能】
>【MT5】モメンタムのインジケーター5選!【MTF機能や平滑化も】
※また、TradingViewでもMTF機能つきモメンタムやモメンタムのダイバージェンスを自動検知するインジケーターが利用できます。
表示方法
インジケーター検索欄で、「mom」と入力してクリックする
モメンタムのパラメーター
モメンタムのパラメーターは、14がデフォルトです。
その他にも、5・20・50・100などが使われます。
モメンタムの主な期間と役割
- 5:短期の値動きの勢いを測定
- 20:中期トレンドの強さを測定
- 50・100:長期トレンドの強さを測定
期間5など小さなパラメーターのモメンタムは、値動きの小さな変化を読み取ることができますが、その分激しく上下に振動します。
そのため、100水準とのクロスなどのシグナルが多発するので、エントリーシグナルとしては使いにくいです。
50や100の大きな期間のモメンタムは、長期トレンドを発見するのが得意です。
上の長期上昇トレンド相場では、モメンタム(100)が100水準以上で長い間上昇し続けています。
トレンド相場でのモメンタム分析
モメンタムのラインの傾きは、トレンド方向の価格速度、つまりトレンドの勢いを表します。
※モメンタムの傾き=推進波における、モメンタムの極小値・極大値をラインで結んだ角度
- モメンタムの傾き=急:トレンド方向の勢い強い
- モメンタムの傾き=緩:トレンドが緩やかに上昇(下落)
傾きが緩やかになっていくのは、トレンドの勢いが衰退していることを示唆しています。
トレンドフォロー派は保有ポジションを手仕舞い、逆張り派の攻勢が強まる段階に移行しているので、順張りで仕掛ける場合は要注意です。
また、推進波の各極値の大きさは、トレンドの推進力を表します。
上昇トレンドの場合
- 極大値の切り上げ:上昇力が増加している
- 極大値の切り下げ:上昇力が弱まっている
トレンド転換を示唆する3つのシグナル
上昇トレンドにおいて、次の3つのシグナルが連続して発生すると、トレンド転換orレンジ移行の可能性が高いです。
- 押し目に対応する、モメンタムの極小値が切り下がる
- 前回のモメンタムの上昇幅を、下落幅が上回る(|極大値|<|極小値|)
- モメンタムの極大値&トレンドの高値が共に切り下がる
※シグナルの発生順は、順不同です。
推進波におけるモメンタムの極大値の大きさを、押し目におけるモメンタムの極小値が超えた場合、下落力が上昇力を上回ったと考えられます。
モメンタムパターンで手を出すべきでない相場を見つける!
中期間の価格変動を測定する、モメンタム(14)やモメンタム(20)が100水準を中心に小刻みに振動している場合は、買い売りのパワーバランスが拮抗しています。
このとき上のチャートのように、値動きが小さく方向感がはっきりしない、もみあい相場を形成しています。
こういった相場でのトレードは、リスクリワードレシオが悪化するのでエントリーは避けましょう!
また、モメンタム(5)のノイズが激しい(小さな山谷が多発している)場合は、値動きが荒くなっている事が多いので要注意です。
モメンタムのエントリーシグナル4選
モメンタム指標は、押し目買い(戻り売り)やブレイクアウトにおけるエントリーシグナルとして利用できます。
ここでは、4つ紹介します。気に入ったものがあれば、ぜひ活用してみてください!
シグナル1
- 最高値をモメンタムが上抜けたらブレイク買い
- 最安値をモメンタムが下抜けたらブレイク売り
チャネル内におけるモメンタムの最安値を、モメンタムが下抜けたら売りを仕掛けます。
シグナル2
- 上昇トレンド:モメンタムが100を下抜け、再度上昇したら押し目買い
- 下降トレンド:モメンタムが100を上抜け、再度下落したら戻り売り
上昇トレンドにおいて、モメンタムが100を再び超えると、トレンド方向の勢いが復活して価格が再上昇します。
シグナル3
- 100以下、または100近くでのモメンタムとMAのゴールデンクロスで買い
- 100以上、または100近くでのモメンタムとMAのデッドクロスで売り
上のチャートでは、モメンタムにEMA(10)を表示しています。
100より上でのモメンタムとEMAのゴールデンクロスは、押し目買いが失敗に終わる確率が高いので注意してください。
シグナル4
- 上昇トレンド:切り下がっている高値2点を起点にラインを引き、そのトレンドラインをモメンタムが上抜けたら押し目買い
- 下降トレンド:切り上がっている安値2点を起点にラインを引き、そのトレンドラインをモメンタムが下抜けたら戻り売り
このシグナルは、モメンタムが100水準を下回らない、浅い押し目・戻りでの仕掛けに利用できます。
モメンタム指標を使う上での、3つの注意点
モメンタム指標を使う上で押さえておくべき注意点は次の3つです。
1.トレンド相場でモメンタムを使った逆張りは危険!
上昇トレンド相場において、モメンタムが過去の最大水準に到達しても、買われすぎと考えて逆張り売りで仕掛けるのは危険です。
トレンドはさらに勢いを増し、大きく上昇することが多々あります。
2.騙しのブレイクアウトでのモメンタムの動き
ブレイクアウト手法では、ブレイクアウトの勢いを確かめるためにモメンタムが使われることがありますが、次のような欠点があることに注意してください。
上のトライアングルパターンでは、騙しのブレイクアウトでもモメンタムは釣られて上昇しています。
そのため、上昇ブレイクアウト時にモメンタムも同時に上昇しても、必ずしもブレイクアウトが成功するとは限りません。
モメンタムが上昇するだけでなく、レンジやチャネル内におけるモメンタム最高値を超えることができているかを確かめましょう。
最高値をモメンタムが超えてない場合は、ブレイクアウトの勢いが弱く、ブレイクアウトが失敗に終わる可能性があります。
3.相場のボラティリティは測定できない
モメンタムは価格の変化率を測定できますが、相場のボラティリティは正確に測定することができません。
上の上昇トレンドでは、価格がジリジリと上昇し各ローソク足の実体が小さいため、ボラティリティが低いと判断できます。
しかしこのとき、モメンタムは安定上昇しており、ボラティリティの低さと乖離した動きを見せています。
※ボラを測定する特化指標ATRでは数値が小さくなっており、ボラの低さを正確に反映しています。
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モメンタムの定量分析
1.過去データと比べる
モメンタムを使って、前日や先週などの過去データと比べた、価格の変化率を調べることができます。
タイトル
- 前日比:日足のモメンタム(1)
- 先週の曜日別:日足のモメンタム(5) ※先週の同じ曜日における変化率
- 前週比:週足のモメンタム(1)
- 前月比:月足のモメンタム(1)
- 前年比:月足のモメンタム(12) ※前年の同じ月における変化率
例:ドル円月足チャート|モメンタム(12)
たとえば、5月のモメンタム値は、前年5月と比較した価格の変化率を表します。
モメンタムの動き・数値を見ることで、前年と比べた今年の相場の活気度を調べることができます。
※出来高の変化率を調べる方法は、『【FX】出来高の変化率を測定する指標 VROCの使い方!』を参考にしてください。
2.別銘柄のモメンタムと比べる
比率で表したモメンタム指標の場合、FXや株の異なる銘柄のモメンタムの数値を比較することが可能です。
モメンタムの大小関係を見ることで、どの銘柄が現在相場が大きく動いているか確認し、トレンドフォロー手法に適した銘柄を選出することができます。
上の画像は、ドル円とユーロドルの日足です。
モメンタム(20) | 100水準からの乖離幅 | |
---|---|---|
ドル円 | 99.30 | -0.70 |
ユーロドル | 100.55 | +0.55 |
100水準からのモメンタムの乖離幅はドル円の方が大きいので、現在はユーロドルよりもドル円の方が相場の動きが活発だとわかります。
注意ポイント
差で表したモメンタム指標では、異なる銘柄でモメンタムの数値を比較することはできません。
上のドル円、ユーロドルのモメンタム[差]はそれぞれ-0.76、0.0039であり、桁数が2桁異なります。
そのため、銘柄スクリーニングの指標として利用する場合は、モメンタム[差]ではなく、モメンタム[比率]を使いましょう。
【規格化モメンタム】CMOの紹介!
モメンタムのデメリットとして、買われすぎ・売られすぎ水準が時間軸によって異なる点が挙げられます。
Chande Momentum Oscillator(CMO)はこの欠点を克服するために開発された改良版モメンタム指標です。
これは-100~+100の範囲で振動し、価格の勢いの変動を表します。
詳しくは、『CMOの使い方【環境認識&3つのエントリーシグナル】』で解説しているので興味がある方はぜひ御覧ください。