この記事では、価格の変化率を測定する指標「ROC」の見方・使い方を紹介します。
これは、FX相場におけるトレンドの速度の測定や、買われすぎ(売られすぎ)状態の検出、曜日別の価格の変化率の調査など、さまざまな用途があります。
特に、トレンドフォロー手法を使っている方におすすめの指標です!
目次
【FX】ROCとは?【価格の変化率を測定】
ROCは、一定期間前の価格と比較した、現在の価格の変化率を測定するテクニカル指標です。
具体的には、n本前の足の終値を基準とした、現在の価格の上昇率/減少率を次の式で求めます。
計算式
ROC = (現在の足の終値 - n本前の足の終値) ÷ n本前の足の終値 × 100
計算例
ROC数値の基本的解釈
・ROC=正:現在の価格はn本前の終値より高い
・ROC=負:現在の価格はn本前の終値より安い
・ROCの数値が大きい:価格の上昇率(下落率)大
・ROCの数値が小さい:価格の上昇率(下落率)小
・ROC=0%:現在の価格はn本前の終値と同じ
遅行スパンとROCの関係
現在の終値とn日前の価格は、遅行スパンで視覚的に比較できます。
遅行スパン(期間20)は、現在の終値を20本前にずらしたものです。そのため、ROCと遅行スパンは次のような関係になっています。
遅行スパン(20)>ローソク足終値:ROC(20)>0
遅行スパン(20)<ローソク足終値:ROC(20)<0
パラメーター
ROCのパラメーターは、12と25が一般的に使用されています。
個人的には、使用しているトレンド指標のパラメーターと同じにするのが良いと思います。
たとえば、移動平均線(期間20)やボリンジャーバンド(20)をチャートに表示しているなら、ROCも20期間を使うのがおすすめです。
これにより、同じ期間における価格の変化率(ROC)・価格の平均値(MA)・価格の標準偏差(BB)を比較分析することができます。
※RSIやMACDなどのオシレーターと同じパラメーターにして、オシレーターの多角分析をすることもできます
他にも、短期の変化率を調べたい場合は10期間、長期の変化率を調べたい場合は100や200期間があります。
ROCの見方【トレンドの速度を解析】
ROCは、特定期間にわたって変化する相場の速度・勢いを分析するのに適したオシレーター指標です。
特に、トレンド相場の速度が加速・減速、または同じ速度を維持しているかどうかをリアルタイムで追跡することができます。
トレンド相場におけるROCの見方
1.ROCが0%を超えて上昇:価格が上昇しており、上昇トレンドが加速している
2.ROCが0%を超えているが減少している:上昇トレンドの速度(勢い)が低下している
3.ROCが0%を下回って減少:下降トレンドが加速している
4.ROCが0%を下回っているが上昇している:下降トレンドの速度が低下している
5.ROCが0%に回帰する:相場の速度がほぼ失われた状態
②や④は、相場がリトレースメント(調整段階)に移行しています。
また、ROCが0%付近で上下動している場面は、縮小したレンジ相場が発生しています。
他にも、ROCの傾きはトレンドの加速度を表します。
※ROCの傾きを測定するには、ROCの極大値と極小値をラインで結びます。
角度分析
・ROCの角度が急:勢いの強い上昇(下落)
・ROCの角度が小:緩やかな上昇(下落)
ROCの上昇角度の縮小は、上昇トレンドの推進力が低下しているサインになります。
注意点
ROCが0%を超えて上昇していても、必ずしも上昇トレンドが発生しているとは限りません。
深い調整下落だったり、値幅の大きなもみあい相場であるケースもあります。
浅い押し目でも、0%を少し下回ることがあります。ROCが0%を下抜けてもトレンド終了・転換したと判断しません。
ROCはあくまでトレンドの速度を測る指標であり、トレンドの発生はMAなど他のトレンド指標を利用します。
関連 【相場のパワーバランスを解析!】ブルパワー&ベアパワーとは?使い方4選!
ROCとトレンドの逆行&乖離
ROCとトレンドの逆行&乖離は、トレンドが終了する可能性があることを示唆するシグナルです。
ROCの逆行
価格がトレンド方向に動いているとき、ROCが反対方向に動く
上のチャートでは、価格は上昇しているのに対し、ROCがじわじわと減少して逆行しています。
ROCの乖離(ダイバージェンス)
・上昇トレンド:高値を更新しているが、ROCは高値を切り下げる
・下降トレンド:安値を更新しているが、ROCは安値を切り上げる
補足
ROCのダイバージェンスの精度を上げるためには、同時にVROCもダイバージェンスが発生しているかCheckしましょう。
VROCは出来高の変化率を測定する、ROCとよく似た指標です。
関連記事 【FX】出来高の変化率を測定する指標 VROCの使い方!
ROC・VROCともにダイバが発生しているのは、価格の勢いと出来高がともに縮小していることを意味しており、ダイバージェンスの信頼性が高まります。
価格の変化率で見る「買われすぎ・売られすぎ」
ROCはまた、相場の買われすぎ・売られすぎ状態を見つけることもできます。
ただし、ROCではRSIやストキャスティクスとは違い、買われすぎ・売られすぎの水準は固定されておらず、
通貨ペアの種類、時間足の大きさ、その時点のボラティリティーの大きさ
などで、独自の水準をとります。
ROCの買われすぎ・売られすぎ水準の見つけ方
直近のROCの極大値・極小値をそれぞれ2~3個探して、買われすぎ・売られすぎの水準(ゾーン)を特定する
上の5分足では、買われすぎ水準(0.11%)にROCが到達すると、上値が重くなっていることがわかります。
売り圧力が高まっている局面なので、買いで仕掛けるのは危険です。
株の銘柄スクリーニングにも使われる
ROCは、株の銘柄スクリーニングの指標としても注目されています。
ROCが極端に大きな数値をもつ銘柄は、買われすぎ(売られすぎ)状態であり、逆張りトレードに向いた相場環境になります。
ROCの銘柄検索方法
ROCのスクリーニングは、TradingViewの「スクリーナー」で行えます。
手順 ※ここでは、株式スクリーナーで解説します
step
1上のリンクから、「株式スクリーナー」のサイトを開く
step
2右端の「︙」をクリックし、検索バーに「ROC」と入力
step
3ROCが検索結果に表示されるので、これをクリック
すると、ROC(9)がスクリーン画面に表示されます。
ROCを1回クリックすると、下の画像のように、ROCの高い順に銘柄がリストアップされます。
さらに、ROCをクリックすると、ROCの低い順に銘柄が並びます。
これらはそれぞれ、買われすぎ・売られすぎの極限状態にある銘柄です。左端の銘柄コードをクリックすると、そのチャートを見ることができます。
例:KEIWA(恵和)|日足ROC(9)=83.61 ランキング2位(2019年12月23日)
下のKEIWA日足チャートを見ると、7日連続陽線が出現して、価格が急騰しています。
相場が買われすぎ状態であり、逆張り売りに適した銘柄です。
曜日別の価格の変化率を調べる方法
日足のROC(5)は、先週の同じ曜日の日と比べて、価格がどれだけ変化したかを調べることができます。
たとえば、今週の月曜日のROC(5)は、先週の月曜日と比べた「価格の上昇率/減少率」を簡単に見ることができます。
上のドル円日足では、ROCが正と負を交互に行き来している周期性をもっています。
この特徴から、来週は大きな下落が予想できます。
また、同時にVROC(5)も表示して、週別の出来高の変化率もあわせて見るのもいいと思います。
今週のマーケット分析や各通貨ペアの特徴・癖の研究などに役立ててください!
ROCを使ったFX手法
ROCを使った手法は、次の3つがあります。詳しくは、下記記事を参考にしてください。
ROC手法
- ピッチフォークとROCを使った逆張り手法
- MAとS-ROCを使った順張り手法
- ROCボリンジャーを使った、MTFトレード
詳しくは→ ROCを使ったFX手法3選!【順張り&逆張り】
平滑化ROC【平均価格の変化率】
平滑化ROC(S-ROC)は、アレキサンダー氏著書「投資苑」で紹介された改良型ROCです。
S-ROCは、計算値に価格の終値ではなく、EMA(価格の平均値)を使います。
つまり、指定期間前のEMAと比較した、現在のEMA値の変化率(平均価格の変化率)を算出します。
計算式
S-ROC =(現在のEMA(m) - n本前のEMA(m))÷ n本前のEMA(m) x 100
S-ROCでは、パラメーターは次の2つがあります。
n:ROCの期間
m:EMAの期間
例:(n,m)=(20,10)の場合
S-ROC(20,10)は、20本前のEMA(期間10)と比較した、現在のEMA値の変化率です。
※「投資苑」では、(n,m)=(21,13)のパラメーターが推奨されています
S-ROCの長所
通常のROCは価格の変化に敏感であるため、相場の小さな変化を捉えることができますが、ROCの転換点がわかりにくいです。
それに対して、S-ROCは平均価格を扱うため、ラインの動きがなめらかに平滑化されています。
S-ROCの長所は、次の3つです。
- ROCにある小さなノイズがカットされている
- S-ROCの転換点を捉えやすい
- ROCの方向性(トレンド)が把握しやすい
ROCで価格速度の小さな変化を検出し、S-ROCで価格速度の大きな方向を捉えるなど、2つの指標を組み合わせて使ってみてはどうでしょうか?
※MT4・MT5のS-ROCインジケーターは、『【MT4・MT5】ROCインジケーター5選』で紹介しています
※TradingViewのチャートでもROCや平滑化ROCを表示することができます
表示方法
インジケーター検索欄で「ROC」または「SROC」と入力してクリックする
ROCボリンジャーの見方
ROCボリンジャーは、ROCにボリンジャーバンドを表示した指標です。
バンドの形・位置を見ることで、価格の変化率・速度の状態を視覚的に把握することができます。
ROCボリンジャーの見方は、次の5つです。
1.0%近くでスクイーズ形成
ボラが小さいレンジ相場になります。その後、大きなブレイクアウトが発生することがあります。
2.高水準or低水準でスクイーズ形成
価格変化率が高い状態を保っている相場です。トレンドの勢いが頭打ちになり、トレンド転換につながる事が多いので要注意です!
このパターンを見つけたら、「そろそろトレンドの終わりは近いか?」と警戒しましょう。
3.バンド幅が拡大し、+2σバンドに沿ってROC上昇(‐2σバンドに沿ってROC減少)
価格が急騰・急落しています。上位足で発生した場合、下位足で順張りを仕掛けるチャンスです!
4.中心線(20SMA)が上向き上昇中 5.中心線が下向き減少中
上昇トレンドが発生していることが多いです。中心線が方向転換するまで、買い目線で固定しましょう。
関連記事 相場のボラティリティを解析!ATRボリンジャーの使い方を徹底解説!