FXでは、特定の通貨ペア間で強い相関性があります。
この記事では、通貨ペアの相関関係を利用する実践的な方法を6つ紹介します。
相関性を利用することで、リスク分散や騙しの回避、利食いのタイミングを計るなど、さまざまなメリットがあるのでぜひ参考にしてください。
目次
FXの相関関係とは?
FX通貨ペアの相関係数は、一般的に次の式で算出します。
相関係数は-1~+1の範囲をとり、+1に近いほど正の相関性が高く、-1に近いほど負の相関性が高いです。
正の相関性の見方は次の通りです。
0.0 から 0.2 – 相関が非常に弱い、ほとんどない
0.2 から 0.4 – 相関が弱い、低い (あまり顕著でない)
0.4 から 0.7 – 相関が中程度
0.7 から 0.9 – 相関が強い、高い
0.9 から 1.0 – 相関が非常に強い
相関性を利用したトレード・分析は、正または負の相関性が強いほど分析精度が高くなるため、相関係数0.7以上の2つの通貨ペアで利用しましょう。
補足1
相関係数は、チャートの時間足で異なります。
一般的に、日足や週足など、より大きな時間足の相関性は信頼性が高いです。
逆に、1分足など小さな時間足では、ランダムな動きが生まれやすく、相関性の信頼性がやや低くなります。
補足2
また、相関性の強さは、市場時間によって異なります。
たとえば、ユーロやポンドを含む通貨ペアは、欧州市場で活発に取引が行われるため、相関性が高くなります。
同様に、米ドルを含む通貨ペアは、ニューヨーク市場の時間帯で相関性が高くなります。
ちなみに、通貨ペアの相関係数を見る方法は次の2つがあります。
TradingViewでは通貨ペア間の相関係数を測定するインジケーターがいろいろあります。
詳しくは→ 【TradingView】通貨ペアの相関係数を測定するインジケーター18選!
複数の通貨ペアの同時トレードで絶対にしてはいけないこと
正の相関関係の高い通貨ペアで、同じ方向に同時に仕掛けてはいけません。
たとえば、下のユーロ/ドルとポンド/ドルの15分足を見てください。
2つの通貨ペアで同時に直近高値の水準を上方向にブレイクアウトしています。
このポイントで、それぞれリスク率2%で買いを仕掛けたとしましょう。
ユーロ/ドルとポンド/ドルは正の相関性が高く、ユーロ/ドルが下落すると、ポンド/ドルも下落する傾向があります。
そのため、実際は2つの独立したポジションをもっていますが、相関性が高い故、リスク率4%の1つのポジションをもっているのと同じになります。
上の相場でも、ブレイクアウトがユーロ/ドルとポンド/ドルともに失敗になり、一気に資金の4%を失うことになりました。
また、正の相関性が高い2つの通貨ペアを、逆方向に同時にトレードするのも避けましょう。
2つの通貨ペアが同じ方向に動く確率が高いため、一方が利益が出ても、もう一方が損失を出して、その利益を相殺してしまいます。
上のチャートでは、ユーロ/ドル15分足の短期下降トレンドで戻り売りを仕掛け、同時にポンド/ドルの上昇ブレイクアウトプルバックで買いを仕掛けています。
その後相場はともに大きく上昇しており、ポンド/ドルで利益が出ましたが、ユーロ/ドルは損失を出し、利益の一部を相殺することになりました。
同様に、負の相関性が高い2つの通貨ペアを、同方向に同時にトレードするのも避けましょう。
たとえば、下の15分足チャートでは、ユーロ/ドルを底値圏で買い、同時に負の相関関係にあるドル/スイスフランも上昇ブレイクアウトで買っています。
その後、ユーロ/ドルは上昇して利益が発生し、ドル/スイスフランは下落して損失が発生しました。
以上より、複数のポジションを同時に持つときは、相関係数が0.4以下の、相関性が低い通貨ペアでトレードするのが理想的です。
通貨ペアの連動性を利用して、利食いタイミングを計ろう!
通貨ペアの連動性を利用して、利食いタイミングを計ることもできます。
たとえば、ある通貨ペアがキリ番やピボットポイントなどのレジサポラインに到達してトレンドが停止すると、相関性の高い通貨ペアもトレンドが終了する可能性があり、これは利食いのタイミングになります。
上のチャートでは、ユーロ/ドル15分足で価格がピボットポイントS1に到達し、ダブルボトムを形成して下値の硬さを示しています。
これに連動して、ポンド/ドルも下降トレンドが終了し、トレンド転換しました。
ポンド/ドルチャートだけ見ると、前触れもなく突然トレンド転換したように見えます。
しかしこれは、実はユーロ/ドルの買い圧力の高さを見た市場参加者が、ポンド/ドル相場も売りが劣勢になると予想して、売りポジションを利益確定したり、逆張り買いを仕掛けたことで引き起こされました。
そのため、ポンド/ドルで売りポジションを保有している場合、ユーロ/ドルで価格がピボットポイントS1に到達したタイミングで利益確定しましょう。
同じように、その前後のポンド/ドルの上昇トレンドも、ユーロ/ドルがピボットポイントに到達すると、トレンドが終了しています。
また、トレンドラインのブレイクアウトも利食いシグナルになります。
下のドル/円では上昇トレンドラインを下抜け、ピボットラインR3下で強い売りの抵抗を受けています。
そのため、ユーロ/円も上昇トレンドが終了する可能性があります。
ドル/円のトレンドラインブレイクアウト後の、ユーロ/円の押し目買いはドル//円の上値の重さに連動して、ユーロ/円も価格が伸びにくいので、ここでの買いは避けましょう。
関連:【FX】ピボットポイントの戦略・使い方をまとめて解説!
相関性を利用したリスク分散
相関性を利用して、リスク分散することもできます。
たとえば、資金管理のルールで、1回のトレードでリスク率1%のポジションをもつとします。
この場合、1つの通貨ペアでリスク率1%のポジションを持つ代わりに、相関性の高い2つの通貨ペアでそれぞれリスク率0.5%の半分のサイズのポジションをもつことで、リスクを分散することができます。
上のドル/円・オージー/円の5分足を見てください。
どちらも上昇トレンドを形成しており、直近高値のブレイクアウトで買いを仕掛けたいと思います。
このとき、ドル/円・オージー/円どちらでブレイクアウトが成功するか予測できないので、半分のポジションで同時に買いを仕掛けましょう。
今回は、ドル/円がブレイクアウト成功し、オージー/円はブレイクアウトが失敗に終わりました。
もし、オージー/円のみで仕掛けていた場合、ドル/円の絶好のトレードチャンスを見逃すことになります。
この戦略のデメリットは、今回のように一方が負けトレードになった場合、利益の一部が相殺されることです。
短期逆張りなど損失が利益上回る手法では、この戦略で1勝1敗のケースで損失が発生することになります。
そのため、リスクリワードレシオが1以上の手法でのみ、この戦略を使用するのがいいと思います。
また、ポジションの買い増し・売り増しをしたい場合も、同じ通貨ペアでポジションを追加するのではなく、相関性の高い通貨ペアでポジションを追加するのがおすすめです!
上のユーロ/円15分足で下降トレンドラインのブレイクアウトで買いを仕掛けたとしましょう。
その後、上昇トレンドは順調に継続しており、買い増しをしたいと考え、ドル/円で買いポジションを追加します。
ドル/円で買い増しすることで、もしユーロ/円がトレンドが終了しても、ドル/円がトレンド継続する場合、さらに利益を伸ばすことができます。
また、今回のケースでは、買い増しポイントを比較すると、ドル/円のほうが直近の価格でミニレンジを形成しており、エネルギーを貯めた状態になっています。
そのため、ドル/円のほうがトレンド継続する可能性が高く、ユーロ/円で買い増しするよりリスクが低いと判断できます。
ブレイクアウトの精度UP!
相関性を利用して、ブレイクアウトトレードの精度を上げることもできます。
下の5分足では、ユーロ/円で騙しのブレイクアウトが発生したあと、ドル/円で上昇ブレイクアウトが発生しました。
ブレイクアウト2波において、高値圏で下落することなく価格を維持しており、買い圧力が高いと判断できます。
そのため、その直後に発生したユーロ/円のブレイクアウトで買いを仕掛けましょう。
このように、ある通貨ペアのブレイクアウトを、相関性の高い通貨ペアのブレイクアウトが成功するかどうかの判断材料として利用することができます。
もうひとつ例をみてみましょう。
下のチャートでは、ユーロ/ドル5分足がシンメトリカルトライアングルの下ブレイクアウトが成功して大きく下落しています。
そのため、ユーロ/円のレンジも下方向のブレイクアウトが成功する確率が高いです。
レンジ下限を下抜けたら、積極的に売りを仕掛けましょう。
その後、ユーロ/ドルでMACDのダイバージェンスが発生しました。ユーロ/ドルの下落の勢いが低下しており、ユーロ/円も下落の終わりが近いです。
損切水準を直近高値近くに動かして、すばやく利益確保できるよう準備しておきましょう。
通貨ペアの逆行は、エントリー回避シグナル!
正の相関関係にある通貨ペアが逆行した動きを見せる場合は、エントリーするのはやや危険です。
下のユーロ/円5分足では、下降トレンドにおいて、価格が下降トレンドラインで上値を抑えられています。
さらに、トライアングルを下ブレイクアウトし、売り優勢の局面になっています。
そのため、この状況において、ドル/円で買いを仕掛けるのは危険です。
ドル/円はいったん上昇するも、ユーロ/円の下ブレイクアウトに釣られて急反転し、大きく下落しました。
安全に仕掛けたい場合は、ユーロ/円とドル/円の方向性が一致したのを確認してエントリーしましょう。
今回のドル円相場で仕掛けたい場合は、ユーロ/円の下ブレイクアウトに連動して発生した下降トレンドにおける戻り売りがおすすめです。
もうひとつ例をみてみましょう。
下のチャートでは、ユーロ/円1時間足でトライアングルパターンを形成し、下方向にブレイクアウトしました。
そのため、その直後に発生した、ドル/円のレンジ上昇ブレイクアウトは失敗になる可能性があります。
同様に、ドル/円で直近高値を上昇ブレイクアウトしたポイントも、ユーロ/円で下降トレンドライン&カウンタートレンドラインで上値を抑えられて売り圧力が高いため、ブレイクアウトは失敗になる可能性が高いです。
テクニカル指標の連動性
相関性の高い通貨ペアは、テクニカル指標の動きも互いに影響を与えます。
下のオージー/円15分足では、上昇トレンドが発生しています。
ドル/円が一目均衡表の雲を下抜け、雲下で何度も反発下落して強い抵抗を受けています。
これを受けて、オージー/円も上昇の勢いが弱体化し、いったん調整段階に移行しました。
そして、ドル/円が長大陽線で雲を上抜けると、オージー/円もトレンド再開しました。
その後、ドル/円が雲上で反発上昇するポイントは、通貨の連動性を利用したオージー/円の押し目買いポイントになります。
下のポンド/ドル15分足では、上昇トレンドの高値圏で雲の中に入り、レンジ相場に移行しました。
これに連動して、ポンド/円も方向感を失いレンジ入りしています。
このように、ある通貨ペアが雲内部に侵入したとき、相関性の高い通貨ペアもレンジに移行する可能性があるので要注意です。
また、レンジ入りの早期発見は、ボリンジャーバンドでも行えます。
下のドル/円15分足でボリンジャーバンドの幅が収縮し、スクイーズに移行すると、ユーロ/円もレンジ相場へ移行しています。
※FXの相関性について、より詳しく学びたい方は次の2つの記事がおすすめ!
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※TradingViewでも、複数のチャートを重ねて表示することができます。
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方法
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また、サブウィンドウにチャートを表示することもできます。