この記事では、豪ドル(オーストラリアドル)の特徴を解説します。
豪ドル相場の短期的および長期的な相場展開を予測するのに役立つので、オージー円(AUD/JPY)やオージードル(AUD/USD)を取引している方はぜひ参考にしてください!
関連:【FX】カナダドルの特徴は?【原油相場や政策金利、VIXで大きく動く!】
目次
豪ドル通貨はコモディティ(CFD)市場と相関性が高い!
オーストラリアは資源輸出国で、鉄鉱・ウラン・金・石炭・ニッケルなどの豊富な地下資源やリチウム・コバルトなどのレアメタルを産出し、羊毛・牛肉・小麦・綿花などの農畜産物の生産も盛んです。
オーストラリアの主な輸出品
- 小麦 原油 石炭 天然ガス 鉄鉱石 ウラン鉱 牛肉 金
そのため豪ドルは商品通貨として、コモディティ市場と相関性が高いです。
AUD/JPYとコモディティ市場の相関係数(2019年4月15日~2020年4月15日)
ポイント
資源価格の高騰 → オーストラリア国内の企業業績潤う → 豪経済好調 → 豪ドル通貨買われる → AUD/USDやAUD/JPYの価格上昇
例1:AUD/USDは、WTI原油と正の相関関係が高い
例2:小麦相場はAUD/USD・AUD/JPYの動きを先行することがある
上の週足チャートでは、AUD/USDの上昇トレンド転換前に、小麦相場が急落しており、AUD/USDの大きな下落の前兆となっています。
オーストラリアの輸出相手国は?オージー円・オージードルへの影響は?
オーストラリアの主な輸出先は、中国・日本・韓国・インド・香港です。
特に、オーストラリア経済は中国経済に大きく依存しており、中国経済の成長率が鈍化すると、オーストラリア経済に大きなダメージとなります。
中国経済の失速は、豪ドル通貨の下落要因!
中国はオーストラリアの最大貿易相手国(総輸出額の約30%)であり、オーストラリアから石炭や鉄鉱石などの多くの原材料を輸入しています。
主要貿易相手国(2017年)
1位:中国30.6% 2位:日本12.7% 3位:韓国5.9%
そのため、オーストラリア経済は中国の経済動向に大きく依存しています。
- 中国の経済成長率が良好:オーストラリアの輸出額が増加し、豪経済が潤う。また、中国企業の貿易取引の支払いとして、決済通貨である豪ドルの需要が高まる
→ 豪ドル通貨の価値が高まる - 中国の経済成長率が減速:中国経済が低迷すると、中国の需要が低下して、オーストラリアの輸出額が減って、豪経済はダメージを受ける
→ 豪ドル通貨の価値が下げる
上の画像は、2015年~2019年のAUD/USD日足チャートと中国の実質GDP成長率(前年比)です。
実質GDP成長率が減少(=中国経済の減速)した2015年・2018年・2019年は、それに連動してAUD/USDも大きく下落しています。
それに対して、実質GDP成長率が横ばい推移した2016年・2017年は、AUD/USDが緩やかに上昇しています。
また、中国の金融政策や経済指標の発表でも、AUD/USDやAUD/JPYが大きく動くことがあるので要注意です。
注意ポイント
中国経済指標は10時、10時30分、11時の3つの時間に発表されることが多いので、豪ドル通貨を取引する場合はこの時間帯に要注意!
他にも、AUD/USDやAUD/JPYなどの豪ドル通貨は、上海総合指数と連動する動きを見せます。
- 上海総合指数=上海証券取引所における株価指数で、中国経済を反映したもの
上海総合指数のほうがトレンドの動き始めが早いため、AUD/USDやAUD/JPYの先行指標として、トレンドの方向・開始を予測する指標として利用できます。
自然災害がオーストラリア経済に大打撃を与える!【豪ドルの売りを引き起こす】
オーストラリアの総輸出のうち、鉱産物が約40~50%、農林水産物が約10%を占めているため、オーストラリア経済は1次産品市況や気象条件に大きく左右されやすいです。
そして、オーストラリアでは、干ばつ・森林火災・豪雨の自然災害が発生しやすく、小麦・石炭・鉄鉱石などの輸出に大きな影響を与えます。
AUD/USDは2018年1月から2020年3月にかけて長期的な下落が続いていますが、この理由として2017年からの干ばつを始まりとする自然災害の多発が大きな原因として考られています。
注意ポイント
オーストラリアの干ばつや森林火災は、夏の11月~1月ごろに発生することが多いです。
そのため、この時期にオーストラリアで干ばつや森林火災が発生すると、豪ドル通貨は売りが殺到するので要注意です。
※AUD/USDやAUD/JPYは、12月前後で下落しやすい傾向があるので、トレード材料として生かしてください
補足
干ばつは、オーストラリアの農業に大きな損害を与えます。
農業はGDPの3%に相当することから、この問題は重要です。
RBA(オーストラリア準備銀行)は、「農業生産の減少によってGDP成長率が1%前後低下する可能性がある」と推定しています。
実際、2018年のオーストラリア東部での大干ばつにより、豪四半期GDP成長率は約0.9%低下しています。
豪ドル通貨と市場センチメントとの関係は?
これまで述べたように、オーストラリアは原材料を輸出する資源国であり、そのため世界経済の動向に大きく影響を受けます。
- 世界景気が良好(リスクオン):原材料の需要が高く、豪経済は活性化→豪ドル通貨上昇
- 世界景気が減速(リスクオフ):原材料の需要が減り、豪経済は悪化→豪ドル通貨減少
下の画像は、AUD/USD日足&VIXのチャートです。
VIXは市場センチメントを測定する指標で、VIXの高騰は市場リスクが高まっていることを示しており、AUD/USDやAUD/JPYが急落する危険性があります。
特に、日本円やスイスフランなど安全通貨との組み合わせである、豪ドル/円や豪ドル/スイスフランは、リスクオフムードが強まると大きく下落しやすいので気をつけてください。
ポイント
リスクオフでは、安全通貨の需要が高まり、逆に資源国通貨は売られやすいです
→ 豪ドル/円や豪ドル/スイスフランはダブルの需要で、値下がり幅が非常に大きい
例:2008年リーマン・ショック
オーストラリアの信用格付けに要注意!
オーストラリアの信用格付けも、豪ドル通貨に影響を与えます。
オーストラリアの信用格付けは、ここ10年最高評価のAAAを維持しています。
信用格付け(2020年4月14日時点)
- S&P:AAA(ネガティブ)
- DBRS:AAA(安定的)
- Fitch:AAA(安定的)
- Moody's:AAA(安定的)
格下げが決定された場合、豪ドル通貨はリスク高いとみなされ、キャリートレードを運用していた機関投資家の資金回収により、AUD/USDやAUD/JPYが下落します。
例:2020年4月8日、S&Pはオーストラリア格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ
AUD/USDやAUD/JPYでは8日午前9時前に、短期的な急落が発生しました。
AA+への格下げではなく、見通しの引き下げなので、市場への影響度は小さいです。
ちなみにS&Pは、「新型コロナウイルスによるオーストラリア経済の悪化が深刻化した場合、2年以内に格下げする可能性がある」と示唆しています。
豪ドル・円が下落、S&Pが豪格付け見通しを「ネガティブ」に下げ
また、中国の格付けも要注意です。格下げが決定されると、強い売り材料として豪ドル通貨の売りが集中します。
例:2017年9月21日、S&Pが中国格付けをAA-からA+に格下げ
上昇トレンドを形成していたAUD/JPYは、9月21日急落し、その後約2か月間 長期下落となりました。
豪ドルは高金利通貨として人気!金利UPで価格上昇!
オーストラリアは先進国の中で金利の高い国の1つであり、豪ドルは高金利通貨になります。
そのため、豪ドルはキャリートレードで利用される通貨で、下の3つの通貨ペアはキャリートレーダーに人気です。
キャリートレードで人気な通貨ペア
AUD/USD(豪ドル/米ドル) AUD/JPY(豪ドル/円) AUD/CHF(豪ドル/スイスフラン)
市場がリスクオン時、リターンの大きい高金利の豪ドル通貨に資金が流れ込むため、これらの通貨ペアは安定した上昇トレンドを形成します。
しかし、リスクオフのムードが強まると、パニック売りが殺到し、大きく急落しやすい特徴があります。
例:2020年2月、コロナウイルスの世界的拡散で、VIX(恐怖指数)は急騰して80%を超える
市場はリスクオフになり、AUD/JPYは1か月で約1400pips下落しました
また、オーストラリアの政策金利が下がり、アメリカや日本、スイスとの金利差が狭まる、または逆転した場合も大きく価格が下落します。
アメリカは2017年12月に、政策金利を1.25%~1.5%に引き上げ、オーストラリアの政策金利1.5%とほぼ差がなくなり、AUD/USDはキャリートレードとして機能しなくなりました。
その結果、AUD/USDは2018年1月から大きく下落し、さらにアメリカの政策金利が上がって金利差が逆転することで、AUD/USDは長期下降トレンドに入りました。
オーストラリア準備銀行について
オーストラリアの政策金利は、オーストラリア準備銀行(RBA)が決定します。
FXトレーダーがRBAについて知っておくべきポイントは、次の4つです。
- RBAは毎月(1月除く)1回、第1火曜日に会合を開き、政策金利等の金融政策を決定する
- 結果は当日の12時30分(豪夏時間)、または13時30分(豪冬時間)に発表される
- 第3火曜日に、議事録が公表される
- RBA四半期報告(2月・5月・8月・11月)は、今後の政策金利変更を予測する材料として注目されている
AUD/JPYやAUD/USDと他通貨の相関性は?
AUD/JPYと他の通貨ペアとの相関係数(2019年4月13日~2020年4月13日)は、次のとおりです。
AUD/JPYはクロス円の1つであり、他のクロス円と正の相関性が高いです。
特に、同じ商品通貨であるNZドル/円や加ドル/円、また高金利通貨であるランド/円との相関係数が高いです。
また、外貨建て通貨とは、豪ドル/米ドルや豪ドル/フランと正の相関性が高く、ユーロ/豪ドルやユーロ/NZドルと負の相関性が高いです。
AUD/USDの相関係数(2019年4月13日~2020年4月13日)は次のとおりです。
AUD/USDは、米ドル/加ドル・豪ドル/フラン・NZドル/米ドルとの正の相関性が高く、米ドル/加ドルやユーロ/NZドルと負の相関性が高いです。
また、クロス円とは、豪ドル/円やNZドル/円との相関係数が高いです。
豪ドル通貨の取引に役立つサイト!
AUD/JPYやAUD/USDは、次の3つの時間帯でボラティリティが高くなる傾向があります。
・7時~11時:アセアニア市場と東京市場が重なる時間帯
・15時:EU市場のOPENで欧州トレーダーが参加する時間帯
・21時~24時:取引が活発に行われるNY市場の時間帯
オーストラリアの経済指標の発表日時や予想・結果を確認できます。
ポイント
オーストラリアの経済指標の発表は、9時30分や10時30分に集中しています。
そのため、この時間帯は豪ドル通貨は相場が激しく動く傾向があるので要注意です。
オーストラリア政府の要人発言をチャックしたいときに役立つサイトです!
前日や1週間、1か月の価格変動幅のデータを調べることができます。