この記事では、オプション戦略のひとつ、「コンドル」について次の5つの項目を解説します。
【オプション戦略】コンドルとは?
コンドルは、原資産市場が特定範囲でレンジを形成するときに機能する無方向性オプション戦略で、
インプライドボラティリティの減少や時間価値の減衰(タイム・ディケイ)から利益を得ます。
組み合わせ
コンドルは、満期日が同じ4つのオプションを使って構築します。
コールオプションを使う場合は「コールコンドル」、プットオプションを使う場合は「プットコンドル」と呼びます。
コールコンドルの構成
- ストライク価格Aでコール買い
- ストライク価格Bでコール売り
- ストライク価格Cでコール売り
- ストライク価格Dでコール買い
ストライク価格Aが最も安く、Dが最も高いストライク価格になります。
重要パイントは、次の3点です。
ポイント
・4つのオプションの満期日はすべて同じ
・ストライク価格A~B間とC~D間は同じ価格幅にする
・原資産価格はストライク価格B~C間になるよう調整する
※コンドル構築時の原資産がやや強気傾向の場合は、ストライク価格Bを原資産価格に近づけ、また原資産がやや弱気傾向の場合は、ストライク価格Cを原資産価格に近づけます。
プットコンドルの構成
- ストライク価格Aでプット買い
- ストライク価格Bでプット売り
- ストライク価格Cでプット売り
- ストライク価格Dでプット買い
プットコンドルの損益図は、コールコンドルと同じです。
このように、コンドルはブルスプレッドとベアスプレッドの2つで構成された戦略になります。
※ちなみに、この2つは「ロングコンドル」といいます。「ショートコンドル」については、後ほど解説します。
コールとプットどちらを使うか
原資産が強気傾向の場合は、コールオプションのほうがプットオプションより価格が高いため、より安いコストで構築するためにプットコンドルを使用します。
同様に、原資産が弱気傾向の場合は、プットオプションのほうがコールオプションより高いため、コールコンドルを使用します。
このように、現在のコール・プットオプション価格を比較して、よりコストが安いほうでコンドルを構築します。
コンドルのメリット&デメリット
コンドルのメリットは、次の3つです。
メリット
- 最大損失が限定されている
- 広い価格範囲で、利益を上げることができる
→同じ無方向性戦略である、バタフライスプレッドよりも収益範囲が広い - 最大利益となる価格範囲は、権利行使価格B・Cで自由に調整可能である
デメリットは、次の3つです。
デメリット
- 4つのポジションを建てるため、手数料が大きくなります
- 利益に上限が設定されている
- 収益範囲が広い分、最大利益が他のオプション戦略より低い
コンドルの仕組み
コンドルは満期を迎えたときに、原資産価格が損益分岐点の下限~上限の範囲内にある場合、利益が発生します。
損益分岐点の式
- 下の損益分岐点 = ストライク価格A + 支払った正味プレミアム
- 上の損益分岐点 = ストライク価格D ー 支払った正味プレミアム
※支払った正味プレミアム = 購入時のオプションAの価格 + オプションDの価格 ー オプションBの価格 ー オプション価格C
コンドルで最大利益が発生するのは、原資産価格が権利行使価格B~Cの範囲にあるときです。
- 最大利益 = 権利行使価格B - 権利行使価格A ー 支払った正味プレミアム ー 取引手数料
原資産価格がA~B間、またはC~D間にあるときの利益はそれぞれ、
- A~B間での利益 = 原資産価格 ー 権利行使価格A - 支払った正味プレミアム
- C~D間での利益 = 権利行使価格B + 権利行使価格C - 権利行使価格A - 原資産価格 ー 支払った正味プレミアム
また、最大損失は原資産価格がストライク価格A以下、またはストライク価格D以上で発生します。
- 最大損失 = 支払った正味プレミアム + 取引手数料
コンドル戦略の5つの重要ポイント
ポイント1
権利行使価格B・Cの位置で、最大利益が発生する価格範囲を調整することができます。
B~C間を広くするほど、最大利益となる価格範囲が広がりますが、A~B間の距離が狭くなるので最大利益が小さくなります。
ポイント2
また、権利行使価格A・Dの位置で、損益分岐点の範囲を調整することができます。
A~D間を大きくすると、損益分岐点の範囲が広がる一方、最大利益の水準が低くなります。
※B・C一定なら、最大利益の価格範囲は不変です
また、A~B間またはC~D間の損益ラインの傾斜が緩やかになり、原資産価格がB~C間を離れて左右に動いたときの利益の減少速度は緩やかになります。
このように、コンドル戦略は原資産市場のボラティリティの大きさや予想価格変動幅に基づいて、収益が最大化するように権利行使価格ABCDを調整する必要があります。
補足
権利行使価格B・Cは原資産価格の2標準偏差外に設定するのがベターです。
2標準偏差内だと、原資産価格がB~C間(=最大利益範囲)から外れる確率が高いです。
たとえば、満期日までの残り日数=30日のコンドルを構築する場合、日足ボリンジャーバンド(期間=30)の2標準偏差外に権利行使価格B・Cを設定します。
権利行使価格B < -2σバンド、+2σバンド < 権利行使価格C
ポイント3
コンドルの収益は、わずかですが原資産の価格変動に影響を受けます。
たとえば、コールコンドルの場合、原資産価格が権利行使価格A~D間にあるとき、正味デルタはほぼ0で原資産の価格変動から利益を得ることはできません。
ただし、原資産価格が権利行使価格Aを下回っている場合は、正味デルタは正となり、権利行使価格Dを上回っている場合は正味デルタは負となり、株価の変動で正味オプション価値が少し変化します。
ポイント4
インプライドボラティリティがコンドル戦略に与える影響は、原資産価格がコンドルの権利行使価格ABCDのどの位置にあるかで変化します。
たとえば、原資産価格が権利行使価格B~C間にある、またはB・Cの近くにある場合、IVの減少でコンドルは利益が発生します。
補足
オプションはATMに近いほどベガが大きくなり、IVに対するオプション価格の感応度が上がります。
原資産価格がB・Cに近いと、コンドルの2つの売りオプション(B・C)のベガが買いオプション(A・D)より大きくなり、IVに対するオプション価格の変化量は大きくなります。
そのため、IVが減少してオプション価格が減少したとき、売りオプションの利益が買いオプションの損失を上回ります。
また、原資産価格が権利行使価格A・Dの近くや外側にある場合、買いオプション(A・D)のベガが大きく、IVの減少で正味オプション価値が低下します。
ポイント5
ロングコンドル戦略は、タイムディケイから利益を得ることができます。
満期日が近づくほど時間価値の減衰は加速するので、コンドルでのオプションの満期日は30日~45日以内にします。
それ以上大きいと、タイムディケイの恩恵が小さくなります。
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ショートコンドルについて
ショートコンドルは、ロングコンドルのポジションの買い売りを入れ替えたものです。
ショート・コールコンドルの構成
- ストライク価格Aでコール売り
- ストライク価格Bでコール買い
- ストライク価格Cでコール買い
- ストライク価格Dでコール売り
ショートコンドルは、インプライドボラティリティの増加から利益を得る戦略で、原資産市場がトレンドなど一方向に大きく動くときに機能します。
満期日を迎えたときに、原資産価格が権利行使価格Aより安い、または権利行使価格Dより高いときに最大利益が発生します。
最大利益 = 受け取った正味プレミアム ー 取引手数料
また、原資産価格が権利行使価格B~Cにあるとき、最大損失が発生します。
最大損失 = 権利行使価格B - 権利行使価格A ー 受け取った正味プレミアム + 取引手数料