この記事では、オプション戦略の「アイアンコンドル」について、次の4つの項目を解説します。
アイアンコンドルとは?
アイアンコンドルは、原資産相場が方向感のないレンジ相場で機能するオプション戦略で、
インプライドボラティリティの低下やタイムディケイから利益を得ます。
構築方法
アイアンコンドルは、プット×2とコール×2の、4つのオプションを使って構築します。
アイアンコンドルの構成
- 権利行使価格Aでプット買い
- 権利行使価格Bでプット売り
- 権利行使価格Cでコール売り
- 権利行使価格Dでコール買い
※権利行使価格A~Dは、アイアンコンドルの損益図の各頂点と対応しています
ポイントは、次の4つです。
ポイント
- 4つのオプションの満期日は同じ
- 原資産価格は権利行使価格B~C間にくるよう調整する
- 権利行使価格A~B間 = 権利行使価格C~D間
- 権利行使価格B~C間の距離は、原資産価格のレンジ幅やボラティリティの大きさで調整する
補足
原資産市場がやや強気傾向の場合は、株価が上昇することを予測して、権利行使価格Bを原資産価格の右に置くトレーダーもいます。
同様に、原資産市場がやや弱気傾向の場合は、株価が減少することを予測して、権利行使価格Cを原資産価格の左に置くこともできます。
コンドルとの違い
アイアンコンドルは、コンドルと似た戦略ですが、次の2つの違いがあります。
違い1
コンドルは、4つのコール、または4つのプットで構成される
⇔ アイアンコンドルは、コールとプット両方で構成される
違い2
コンドルは、デビットスプレッド
⇔ アイアンコンドルは、クレジットスプレッド
アイアンコンドルのメリット・デメリット
アイアンコンドルのメリットは、次の5つです。
メリット
- 原資産価格の大きな変動による最大損失が限定される
- 権利行使価格A~Bの距離で最大損失を事前に調整できる
- 最大利益となる価格範囲は、権利行使価格B・Cの位置で調整できる
- 無方向性戦略で、原資産価格の方向性を予測する必要はない
- ほかのオプション戦略と比較して、勝率が高い
デメリットは、次の2つです。
デメリット
- 最大損失が最大利益より大きく、損益比率が1を下回る
- 4つのオプションで構築するため、売買手数料が大きい
アイアンコンドルの損益図について
アイアンコンドルは、満期日に原資産価格が2つの損益分岐点の間にある場合、利益が発生します。
- 上の損益分岐点 = 権利行使価格C+受け取った正味プレミアム
- 下の損益分岐点 = 権利行使価格B-受け取った正味プレミアム
※受け取った正味プレミアム = アイアンコンドル構築時のオプションBの価格 + オプションCの価格 ー オプションAの価格 ー オプションDの価格
アイアンコンドルでは、満期日に原資産価格が権利行使価格B~C間にあるとき、4つのオプションがすべて期限切れになり、最大利益が発生します。
- 最大利益 = 受け取った正味プレミアム ー 取引手数料
原資産価格がA~B間、またはC~D間にあるときの利益は、次の式で表されます。
- A~B間での利益 = 受け取った正味プレミアム ー 権利行使価格B + 原資産価格 ー 取引手数料
- C~D間での利益 = 受け取った正味プレミアム ー 原資産価格 + 権利行使価格C ー 取引手数料
また、原資産価格が権利行使価格A以下、または権利行使価格D以上のとき、最大損失が発生します。
- 最大損失 = 権利行使価格B - 権利行使価格A - 受け取った正味プレミアム + 取引手数料
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アイアンコンドルで利益を上げる5つのコツ
コツ1:権利行使価格B~Cの距離
アイアンコンドルでの勝率を上げる重要な要素は、権利行使価格B~Cの間隔です。
B~C間の距離が大きいほど、満期日に原資産価格がこの価格範囲にとどまりやすく、勝率を高めることができます。
このとき、B~C間が広がるほど、最大利益は減少し、逆に最大損失は小さくなります。
逆に、B~C間の距離が狭いほど、満期日に原資産価格がこの価格範囲外で終わる確率が高くなります。
このとき、B~C間が狭いほど、最大利益は増加し、逆に最大損失は大きくなります。
コツ2:権利行使価格B~Cの置く位置
権利行使価格B・Cは、次の水準に置くのが一般的です。
- 権利行使価格Bの水準 = レンジ下限 ー 日足ATR
- 権利行使価格Cの水準 = レンジ上限 + 日足ATR
レンジ下限・レンジ上限ではなく、その水準から日足ATRの数値分離れた水準にすることで、レンジ上限・下限水準での激しい攻防による価格変動の外に、権利行使価格B・Cを置くことができます。
※ATRの期間は、満期日までの残り日数にします。
たとえば、満期=30日のオプションでアイアンコンドルを構築した場合は、ATRの期間は30にします。
また、原資産市場のレンジ上限・下限水準が不明瞭の場合は、標準偏差を使って算出することもできます。
- 権利行使価格Bの水準 = ボリンジャーバンドの-2σバンド ー 日足ATR
- 権利行使価格Cの水準 = ボリンジャーバンドの-2σバンド + 日足ATR
±2σバンドは統計上、原資産価格が約95%の確率でこの範囲に収まることを意味しており、権利行使価格B・Cの位置の目安になります。
※ATR同様、ボリンジャーバンドの期間も満期日までの残り日数にします。
コツ3:原資産が停滞した相場環境
ボラティリティが安定して小さい原資産市場は、アイアンコンドルに適しています。
そのため、次の3つの条件を満たした原資産市場で、アイアンコンドルを仕掛けるのがおすすめです。
- 直近1か月の出来高が小さい
- ヒストリカルボラティリティに表示したボリンジャーバンドが低水準でスクイーズを形成
- RSIが50%を中心に振動している
※ヒストリカルボラティリティのボリンジャーバンドが低水準でスクイーズするのは、原資産が低ボラティリティの状態を継続していることを示しています
コツ4:インプライドボラティリティについて
アイアンコンドルは、インプライドボラティリティ(IV)の減少から利益を得るため、インプライドボラティリティの高い原資産市場で仕掛けることが重要です。
・IVが20未満の場合、IVの下落余地が少なく、IVによる利益が少なくなくなります
・また、IVが上昇中に、アイアンコンドルを仕掛けるのも損失が発生するので避けましょう
そのため、高水準にあるIVが下落に転じるタイミングでアイアンコンドルを仕掛けるのがベストなタイミングです。
上のIVチャートでは、40%~50%が高値圏であり、IVがこのゾーンに到達すると大きく下落すると予測されます。
この領域にIVが到達したら、アイアンコンドルを仕掛ける良いタイミングになります。
補足
通常、原資産価格が下がるとIVが上昇し、原資産価格が上がるとIVが減少します。
そのため、やや強気バイアスである原資産がアイアンコンドルで理想的です。
原資産が弱気バイアスだと、価格の減少でIVが増加して、アイアンコンドルの収益に悪影響を与えます。
また、IVの高い原資産市場を見つけたい場合は、IVランクという指標がおすすめです。
これは異なる銘柄のIVの相対的な大きさを数値化する指標で、IVランクが80%を超えると、IVが急落する可能性が高いと判断できます。
詳しくは→ インプライドボラティリティを異なる銘柄で比較できる指標 IVR&IVPとは?
コツ5:ギリシャ指標との関係
アイアンコンドルの損益図と、ギリシャ指標の関係性を把握することも大切です。
ガンマとベガは、それぞれアイアンコンドルの中央で最小値をとり、左右に広がるほど数値が指数関数的に大きくなります。
また、セータは反対に、アイアンコンドルの中央で最大値をとり、左右に広がるほど数値が減少します。
そのため、時間価値の減衰は権利行使価格B~Cの間で大きいことがわかります。
デルタは、権利行使価格Aの左で最大値をとり、権利行使価格Dの右で最小値をとります。